第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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は、貴方らしくもない。ここに閉じ込めていると言っていた『少年』も、取り逃がしていましたよ。周囲には、影も形も」
「はは……返す言葉もない。こう言う時、日本では何と言うんだったっけ」
「『二兎追うものは一兎をも得ず』、『虻蜂取らず』」
「そう、それだ。欲をかいた結果が、このザマだよ」
頬に触れ、痛みに顔をしかめる。それは、まるで――――『全力で、右の拳で殴られた』ような打撲痕。
「しかし、流石と言うべきかな。彼等の『生命力』は。まさか、廃人にするつもりで刻んだ消沈の三大ルーンを凌がれるとは……」
「……正直、私には信じられない。アレはあくまで、『伝承の類い』だとばかり」
女は、少しだけ瞳に疑念を映す。まさかこの男が見間違いなどはしないと信頼してはいるが、それでも。長年の認識を改めるのは、簡単な事ではない。
「まぁ、僕も実際に目にするまでは半信半疑だったさ。だが、あの少年の――――呪撃を受けるまでは、ね」
「呪撃……欧州の、呪いの一種ですか」
所謂、『指差し』にて行われる呪い。指差した相手を病にするという、手軽な呪い。西洋人が指差しを嫌う由縁である。
「ああ、しかも『殺傷力持ち』クラスだ。加えて、ケルト魔術と融合している……毒矢だった」
「成る程、それで貴方ほどの使い手が遅れを取ったと」
「そう……だったら良かったんだがね。純粋に、物理的に押し負けただけさ。この木偶の棒の、見掛け倒しがね」
苦笑いした、図体ばかり立派な自身を恨めしそうに。
「厄介な呪撃だったよ。ただの呪いならば解呪も出来たんだが――――ドルイドの技が使われていた。まるで、寄生植物のように……撃ち込まれた者の魔力を糧に増殖する呪い。まるで……宿り木のように」
「確かに厄介な呪いですね……今は?」
『ソレ』を撃ち込まれた肩口を擦り、男は苦笑いを消す。
「消えたよ。あの少年の右腕に、殴られた時に」
「……また、『少年』ですか。しかし、妙な魔術ですね」
「言われてみれば、紛らわしいな……しかし、魔術を打ち消す魔術とは恐れ入る。どうしてこう、厄介な事は重なるのか」
「『泣きっ面に蜂』」
「そう、それだ」
また、苦笑いするステイル。その隣で、火織は冷厳な表情のまま。
「分かりました……その『対魔術』の少年の相手は私が。もう一人の少年は……今は、放っておいても問題はないでしょう」
「そうだな……では、あの少年は」
火織から差し出された新しい煙草のフィルムを剥ぎ捨て、魔術により火を点したステイルが紫煙を燻らせる。
「『宿木の弑神』の吸血魔術師は……その次だ」
数時間前にこうして煙草
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