第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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の源流が。命が陸に上がる際に持ち出した、母なる海の潮が在る。
アレを啜れば、この乾きも癒されるだろう。多少、能力開発の為に薬品臭いが――それでも男なんて知らない、雑じり気無しの…………あの■■を啜れば。
軋むように、笑う。否、口角を吊り上げる。その上顎の第三歯、糸切り歯は――――剣歯虎の如く、鋭く。
「――――ッ!」
それを、己の拳でぶん殴る。ほとんど独立したように、その右手が。
正気に返ったのは、そこで。そこまで、無意識だったと言って良い。少なくとも、『対馬嚆矢』は――――
「……じゃねェだろ、ちょっと頭ァ湯立ち過ぎだ。いや」
ただ、道化に甘んじる。嘲笑われ、唾棄され、誰しもが忘れ去る道化に。幸い、四人できゃっきゃと騒いでいた少女達には、自分で自分を殴る姿は見られていない。
ヘラヘラ笑い、少女達の関心を誘う。よくいる、取るに足らない男として。この少し後には、もう忘れられているだろう、そんな。
「で、何かな? ひょっとして、遊び帰り?」
「あ、えっと……は、はい! そうなんです、久し振りに会ったから! もう帰るところです、はい!」
と、つい今まで笑顔だった涙子が、なにか大事な事を思い出したように慌て始めた。
わたわたと、『何か』をポケットに押し込んだ。それだけしか見えなかったし、疲労困憊の身としては早めに解放してくれるのならばそれに越した事はない。だから、突っ込まなかった。
「対馬さんも、風紀委員のお仕事頑張ってくださいね! それじゃ!」
慌ただしく、他の三人を引っ張るように涙子は走っていった。何か不審な気はしたが、今は、兎に角。
「早く……帰って寝てェ」
酷く怠い身体を引き摺るように、遥か遠い自室を目指して歩きを再開した……。
………………
…………
……
身体を引き摺って、漸く辿り着いた其処に、彼は腰を下ろした。荒い息を吐きつつ壁に背中を預け、スリップダウンしながら。
「……遅かったですね、ステイル」
「ああ、待たせたな……神裂 火織」
日の暮れた学園都市の一角、第七学区の喫煙所に――――頬を腫らした、巨漢の魔術師ステイル・マグヌスは。
「酷い有り様ですね。『禁書目録』の確保にも失敗したようですし」
その隣に立ったのは、黒髪を一つに纏めた、Tシャツにジーンズの女性。ステイルから、親しげに『神裂火織』と呼ばれた女である。
「訳の分からない妨害にあってね……全くもって、理不尽な」
憔悴しきった様子で、ステイルは懐をまさぐり……取り出した煙草が湿気っている事に気付き、忌々しそうに投げ棄てた。
「日に二度もしくじると
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