第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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た。
濡れた身体は隠しようもない。しかし、水を錬金術で揮発させて、生乾きレベルまでは乾かす事に成功している。
「厄日どころか、暗剣殺だな……あンの、野郎ォ……!」
反吐を吐きつつ、変温動物のように夏の日差しで体温を回復させる。底冷えは治まらず、骨身に染み込んだ『消沈』の三大ルーンの残滓が未だに感じられた。
それ以外は、何一つ記憶にはない。時間的にも、たったの数秒。そんな短時間に、一体、どんな『人外化生』が付け入れると言うのか。
近くの家電量販店のウィンドウに設置されたテレビからのニュース速報に『第七学区の取り壊し予定のビルが倒壊。老朽化か、手抜き工事か?!』の文字が踊っていたが、一片も興味は抱かない。抱けない。
さっさと通り過ぎてしまおうと、震えの止まらない脚に無理矢理、力を籠めて。
「あれ、対馬さん?」
「あァ――――」
背後からの呼び掛けに、不承不承振り返れば――そこには、少女が四人。内三人は初めて見るが、一人は……
「ああ……佐天ちゃんか。久し振り、遊び帰りかい?」
「こ、こんにちは……ごめんなさい、忙しい感じですか?」
「いやいや、まさか。ちょうど帰りだよ」
つい苛立ちを乗せて振り向いた時の剣幕に怯えたような四人に、努めて優しく。胸元の兎足の護符を握り、『口伝』のルーンを刻みながら。
只でさえ、『消沈』の三大ルーンのせいで消耗した風前の灯の生命力だ。たった一文字分の魔力に変換しただけでも、気が遠くなる。この際布団などと贅沢は言わない、アスファルトでも良いから頭から倒れ込みたくなる。
「ちょ、ちょっと、ルイコ! アンタ、歳上の男の人の知り合いとか居たの?!」
「ふっふーん、まぁね、アケミ。しかも何を隠そう、この対馬さんは学園都市で唯一の能力『確率使い』……人呼んで『制空権域』なのさ」
「よ、よくわかんないけど……唯一な上に『通り名』ってなんかスゴ! な、マコちん!」
「うん。そーだね、むーちゃん」
『アケミ』と呼ばれた背の高い娘が涙子に問い、答える涙子が何故か偉ぶる。それに『むーちゃん』と呼ばれた小柄でボーイッシュな娘が目を輝かせ、『マコちん』と呼ばれた少々ふくよかな娘に呼び掛けた。
「――――…………」
正直、上の空だ。目の前に並ぶ、うら若い首筋に息を。唾を飲む。
喰らい付いて欲しがっているようにしか見えない。無防備に、童話の如く、夏の太陽によって開けさせられた白い首筋。
――あァ、その奥には深紅に色付く命
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