第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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ると。『打ち倒させて見せる』と。
「は――――」
何とか、身体を起こす。死ぬ程の倦怠感、零下に下がったように感じる血液と筋肉を軋ませて。
「――――お断りだぜ、蛆虫野郎。大の男が御礼参りに、助っ人連れだァ? ンな情けねェ真似を、この俺が……ヤる訳ねェだろうがよォ!」
ビッ、と。濡れた亜麻色の髪をオールバックに撫で付けて、どこに居るかも分からない魔本に向けて中指を立てる。その蜂蜜色の黄金の瞳は、不撓不屈の黄金の意志の体言か。
歯牙にも掛からずに敗北しても、心までは折られていない。決して折れない。そんな己が――――訳も分からない魔導書に頼って勝とうなどと。罷り間違っても、有り得ない。
『――――愚かな小僧め。ならば、そのまま朽ち果てるが良い……奴等にとって、貴様は最高の研究材料だろうよ』
吐き捨てるように、雑音が消えた。漸く帰ってきた清らかな水の音に、安堵すら覚える。
後は、魔術も能力も満足に使えない現状でどうやってこの結界から抜け出るか、だが。
「やれやれ――――」
その刹那、視界の端。丁度、見えるか見えないかの境目に現れた……アルマーニの最高級のスーツに身を包み、ぎこちない右手に銀色の懐中時計を携えた――――
「この程度の魔術で……笑わせてくれる。あの魔術師も、蛆虫も。貴様も」
消火水の豪雨すら歯牙にも掛けずに葉巻を燻らせ、燻し銀の声色で時計を見遣る紳士。濡れているかどうか、視界の端では分からない。
――何だ、コイツ……何時から、居た?
無感動に、無機質に。チク、タク、チク、タク、と。冷厳に、淀みなく、ただただ一秒だけを刻み続ける時計を見詰めるだけ。
だとすれば、燃え盛り縮んでいくその葉巻は導火線か、時限装置か。
「――――時間だ、■■■■■■■■■。汝が崇拝者に灰の光を降らせたまえ。全ての時は逆流し、ド・マリニーの名の元に我が支配に下る……」
刹那、時計の秒針が凍った。凍えついた針は、やがて末期の痙攣の如く揺れて――――その聖句の元、常識は覆る。房室を、灰色の光が満たしていく。
「来たれ、■■■■■■!」
視界の端の紳士は、見下げ果てたように葉巻を灰皿に押さえ付けて。代わりに、その手には一冊の――――
「――――やれやれ……余り、手を煩わせないで欲しいものですな……未だ目覚めぬ■■■■閣下」
歯車が、回っている。大きな、大きな。淀みなく、狂いなく。定められた末路へと向かって――――また一つ、また一つ。
………………
…………
……
報知器の発報によって消防吏員が駆け付ける前に、嚆矢は寒気の抜けきらない体を押して歩いてい
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