第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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色の上着のフードを目深に被り、ポケットに手を突っ込んだ――――ホットパンツの少女。
「学園都市の闇の中で足掻きながら死ぬか、その二つね」
そして、いつの間に追い付いたのか。先程の金髪碧眼の少女が、すぐ隣の壁に背を預けて立っていた。
その二人の、姿に似合わぬ炯々たる瞳。まるで本物の猫科の猛獣のような、その瞳に。
『お気遣い有り難うニャア、可愛らしいお嬢さん方。でも、心配には及ばないナ〜ゴ』
相も変わらぬ、人を小馬鹿にしたような表情の黒猫のままで嚆矢は、否――――暗闇に溶ける漆黒のチェシャ猫は、赤く畜光するニヤけ顔のみを空中に浮かべたように。
「――――この大能力者『正体不明』の宿木 嚆矢、どちらかと言えば暗部にいた時間の方が長いからな」
変声機を切り、低い地声で宣言する。その名は、『確率使い』として科学者が匙を投げた識別名を付けられる前の、暗部時代の名。
正体不明の、非在の能力に付けられた畏怖の呼び名にして忌み名。
「――――ふぅん。じゃあ、次は実地試験、と」
最後に、ブーツの足音を響かせながら路地の奥から歩み出てきた女性。すぐ脇におかっぱ頭の黒髪、ピンクのジャージの少女を連れた、気の強そうな茶髪のロングの女性は。
「始めまして、宿木。あたしが『アイテム』の頭――――超能力者『原子崩し』の麦野 沈利よ」
「――――へぇ、アンタが、あの」
紫色のワンピースに白いブーツの、嚆矢より年上と思しき。
「因みにぃ、わざわざ名乗った意味くらいは理解してるわよねぇ?」
「勿論。裏切りは許さないって事だろ、第四位?」
230万人の学園都市の頂点に君臨する、七人の超能力者の第四位『原子崩し』が。
「賢い黒猫ちゃんだこと。嫌いじゃないわよ?」
まるで値踏みするかのように笑った――――
………………
…………
……
路地裏の一角。黒塗りの車輌が一台、宵闇に紛れるように静かに停車している。こんな無人の路地に、一体、何の用があると言うのか。
「……取引相手はまだか?」
その車に乗る、黒いスーツ姿の男。キーを回していない車内には冷房も効いていないと言うのに、だ。
その男が呼び掛けたのは、無線機。その先から――――
『此方からも、何も確認できていない。取引相手も、それ以外も』
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