第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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一体、どんなトリックを? まさか貴男、本当に――――」
「――――はいは〜い! それじゃあ結局、今日はこれまでな訳よ。皆、ウォッキーの次のステージでまた会おうね〜!」
『ニャ?』
と、色めき立って詰め寄った扇子の少女と嚆矢の間に、いきなり割り込んだ少女が一人。
妙に襟の切れ込んだ紺の服に白いミニスカート、パンストを穿いた――金髪碧眼の、帽子の少女は。
「ではまた来週〜!」
と、決めポーズのようなものを取った彼女のスカートの裾から『何か』が落ちる。それは――――軍隊で用いられる『M18 発煙手榴弾』に似た物。
既にピンは、頬に寄せた少女の指先に踊っていた。
『――――ッ!?』
カンッと石畳に落ちた瞬間、手榴弾は凄まじい速さで回転して周囲に毳々しい紫色の煙幕を撒き散らす。
吸い込むのを防ごうと顔を庇い――――今は、被り物をしていた事を思い出した。
『焦ったナ――――ゴふっ!?!』
思い出した瞬間――――襟首を引っ掴まれて、転びそうな位に低い中腰のまま、後ろ向きに物凄い速度で引き摺られていった。
「――――このっ!」
次の瞬間、立ち昇った煙幕の柱。否、突風が石畳から『噴き出した』のだ。
「……くっ、逃がしましたわ。この婚后 光子、一生の不覚……群衆の中にサクラを仕込んでいただけだなんて」
煙幕が上昇気流に巻き込まれて噴き上げられれば、後に残ったのは扇子の少女のみ。
後の二人が駆け寄る中、忌々しそうに呟いて遠くを見詰めた彼女は。
「本当に『魔法』かと、わたくし、期待しましたのに……」
『純粋培養の御嬢様』は、はぁ、と。憂鬱そうに溜め息を漏らしたのだった…………
………………
…………
……
振り向く事も出来ぬまま、路地裏を引き摺られ続けていた。既に、数分も。
辛うじて転倒こそ免れているものの、中腰でのバック走などは元来人間が想定している運動ではない。太股と脹ら脛は、乳酸で発酵寸前である。
『――――ンニ゛ャッ!??』
と、突然の浮遊感と共に天地が逆転する。何の事はない、引き摺られる勢いのままに放り投げられたのだ。
僅かな滞空時間の後、これでもかとポリ袋の積まれたごみ置き場に突っ込んで事なきを得る。人としては、何か大事なものを失った気分だが。
『ひ、酷い目に遭ったナ〜ゴ……』
ごみ置き場から這い出し、本物の猫がするように身繕いをする。その目の前に……小柄な人影は立った。
「覆面は超取らなくても良いです。アナタに超与えられた選択肢は二つ――何もかも忘れて今まで通り普通に超生きるか。或いは――――」
『ニャ?』
オレンジ
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