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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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嚆矢はそれらを少女らに渡す。
 因みに、『二重能力者(デュアルスキル)』とは――――この学園都市にある噂のようなもの。『一人につき一つの能力(スキル)を複数持っている能力者』というものだ。そしてそれは、公式に『存在し得ない』と否定されたものでもある。

『それじゃあ、先ずはそのメモ帳に君達のお(ニャ)前とメアドを書いて欲しいニャアゴ』
「「「えっ?!」」」
『――じゃねーニャ、好きなトランプのマークと数字を書いて欲しいニャア。その後、何も書いてないページをちぎって封筒に入れて左手に持つナ〜ゴ』

 と、あわよくば名前とメアドをゲットしようとナンパトークのような事を口にするも、反応が悪かった為に戯けて茶を濁し、さっさと本題に入る。
 常盤台の常として美少女揃いだったので、少し惜しい気はしたが。

『ちゃんと描けたニャア? では、それを四つ折りにして右手に持って欲しいニャア。そして、早速……ナ〜ゴ!』

 そして、四つ折りにされたメモを載せた少女達の掌に、猫の手を模した肉球付の黒い革手袋に包まれた手を翳す。『(ケン)』と『賭博(ペオース)』の神刻(ルーン)文字が刻まれた、『探索』を助けるその手袋を。
 これにより手元の紙ではなく、『少女達の機敏』により読み取った。まぁ、多分にギャンブルだが。そこは、『制空権内(アトモスフィア)』でカバーする。

『フムフム、読めたニャア。じゃあ次は、転写だナ〜ゴ』

 と、彼女らが左手に持つ封筒に手を翳す。その時の一瞬の煌めきは、錬金術によるもの。これで、読み取ったマークと数字を白紙に転写するのだ。紙の表面を炭化させ、文字にする方式で。

「もう宜しいのですか?」
『どうぞ、開けてくださいニャア』

 おずおずと、封筒に納めていた紙を彼女達は取り出し――――一様に驚いた。

「あ、当たりです」
「私もです……」
「すごいですわ……」
『ニャはは、以上ニャア。ウォッキーキャットのマジックでしたナ〜ゴ』

――魔術と科学の融合……言うなれば、魔術式と科学式による事象改竄とでも言ったところか。

 詰まり、『魔術(オカルト)である神刻(ルーン)文字と錬金術(アルキミエ)を、科学で得た能力(スキル)である制空権内(アトモスフィア)で強化・反動を中和する』という高度な組み合わせ技を、こんなにも詰まらない事に使用している訳である。

『さぁ、お捻りはこちらの鞄にお願いするニャア。実はウォッキー、こう見えて体が弱いから、軽い紙のお金の方が嬉しいナ〜ゴ』

 やはり戯けて小さめのジュラルミンケースを左手で抱えれば、周囲から笑いと共に小銭が投げ込まれる。
 有り難く、それを受け取る。一つも逃さぬよう、外れたものは足や右手で跳ね上げながら。


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