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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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ない気がしたのだ。そしてそれは、知る由もないが、正しい判断であった。

『それじゃあ、そろそろ本番ニャア。ウォッキーの世にも不思議ニャ、マジックショーの開幕ナ〜ゴ』

 等と、パチンと指を鳴らしながら。普段なら口が裂けても言わない、身を切られても取らないようなポーズを取りながら……黒猫は戯けた様子で。

『じゃあ――――そこニャお(ぜう)さん、此方にどうぞニャア』
「えっ――――わ、わたくしですか!?」

 指名したのは、人混みの中央。普通ならば、目にも留まらない位置。だが――――その少女達は、非常に目立っていた。

「どっ、どどっ、どうしましょう……わたくし、指名を受けてしまいましたわ!」
「落ちついてください、婚后(こんごう)さん」
「そうですよ、平常心です」
「ひ、他人事だと思ってますわね〜!」

 扇子のストレート黒髪、ソバージュの栗毛色、黒髪ロング。何故なら、彼女達三人は……『人混みの中でも自然と目を引く』と真しやかに囁かれる制服を身に纏う、『常盤台の生徒』なのだから。
 暫し揉めるも、周囲の期待には逆らえない。その点でも、嚆矢の読みは当たっていた。観念したように前に出た扇子の少女を、まるで。

『ようこそいらっしゃいませナ〜ゴ、お(ぜう)さん。こんニャ夜遅くまで出歩くニャンて、ウォッキーは感心しニャいニャア』
「あ、あう……べ、別に夜遊びをしていたわけではありませんわ。ちゃんと寮監殿の許しを得て、ちょっと買い物を……」

 開いた扇子で真っ赤に湯だった顔を隠す……『婚后』と呼ばれた少女を、弄くって遊ぶ性悪(チェシャ)猫。とは言え、下品にならないよう紳士的に。泣かしたり怒らせたりするのは、本意ではない。
 まぁ実際、夜遊びではないだろう。まだ、十七時半過ぎ。まだ、辛うじて。

『ところで、お連れ様のお二人は何時までそんニャ所に居るのニャア? 早く来てくれニャいと、マジックが出来ニャいナ〜ゴ』
「「――――えっ!?」」

 声を合わせて、残りの二人が慌て始める。まさか自分達までとは思わなかったのだろう。

「あら、湾内(わんない)さん、泡浮(あわつき)さん? 『平常心』なのでしょう?」
「「ううっ」」

 反撃を受けてしまい、同じく常盤台の制服の二人が環視の舞台に連れられた。群衆の中から、鋭い口笛が鳴る。
 いくら目立つ常盤台生とは言え、これだけの人目には慣れないのか、恥ずかしげに頬を染めているのが可愛らしい。

『さぁ、それじゃあ三人に手伝って貰うのは、透視と転写のマジックですニャア。勿論、能力(スキル)じゃ『二重能力者(デュアルスキル)』でも無い限りは無理ですナ〜ゴ』

 『その通りだ』と笑いが起きる中、右手でメモ帳とボールペン、三通の封筒を取り出した
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