第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
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と、そんな彼女に苦言を呈そうとした絹旗の、身長差からの上目遣いが固まった。ある一点を見詰めて。
「えっ、えっ? な、何よ、絹旗?」
そのまま、彼女は放物線状に何度か視線を彷徨わせた。不可解なその仕草に、フレンダは漸く、絹旗が自分の後ろの方を見ている事に気付いて振り返り――――
「ちょ――――何、あれ?」
人混みの中心、衆人環視の中。駅前広場の噴水をバックに、革手袋の手を振るスリーピースのスーツ。
『――――ハァイ、良い子の皆も悪い子の皆もこんばんはウサ!』
まるでタップダンスのように、三メートル程も跳び上がって軽快に革靴を鳴らして着地。そして合成音声丸出しの、やたらにハイなイントネーションで喋る――――
『ボクの名前はウォッキーラビット。よっろしっくピョン〜!』
恭しくお辞儀をする、兎のぬいぐるみ頭の大男であった。
「……もしもし、麦野ですか。はい、今、超見付けました。はい、超目立つ事をしてます……こっちの予想の、超上をいくレベルで。画像ですか、分かりました」
「あれは、あの……結局、頼まれても関わり合いになりたくない訳よ」
完璧に異常者を見る目付きで後退るフレンダ。対し、絹旗は驚きから立ち直ったらしく、淡々と言われた事を熟す。
画像付き通話で、『ウォッキーラビット』と名乗った男がジャグリングや軽業を披露するさまを……通話先の相手に届けていた。
『――――アッハハハハッ! 良いねぇ、良いじゃないさ。良い感じに頭のネジがブッ飛んでるじゃない』
と、通話相手が喝采した。まだ若い、しかし此処に居る二人には無い、『貫禄』のようなモノがある、女性の声だ。
「それじゃあ、麦野?」
『そうねぇ――――適当な理由を付けてブッチするつもりだったけど。気が変わったわ』
「えぇ〜……麦野、本気ぃ?」
興味のなさそうな絹旗と、興味津々の『麦野』と呼ばれた女性。そして、心底嫌そうなフレンダの三人。
その視線を一身に受ける対馬嚆矢……恥ずかしさを勢いと『何も考えない事』で誤魔化している、兎頭の『空っぽ頭』。
『第一試験は合格、二次面接開始だにゃ〜』
月が見下ろす道化は、只只渦中に自ら歩み入る。どうやら、まだまだ彼の夜は長そうだった。
………………
…………
……
無心である。ただ無心に、嚆矢は――――昔、『とある園地の象徴偶像《マスコットキャラ》』の某鼠っぽくオーバーアクションに振る舞う。八つの球のジャグリングを成功するだけではなく、わざとトチって頭に八連発で当てたり、バク転の着地でわざとトチって、股間を強打したり。笑いを取る、道化を演じる。
何となく『今回の相手』は、これくらいしないといけ
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