暁 〜小説投稿サイト〜
Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
20.July・Night:『The Jabberwock』
[13/22]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


 と、そんな彼女に苦言を呈そうとした絹旗の、身長差からの上目遣いが固まった。ある一点を見詰めて。

「えっ、えっ? な、何よ、絹旗?」

 そのまま、彼女は放物線状に何度か視線を彷徨わせた。不可解なその仕草に、フレンダは漸く、絹旗が自分の後ろの方を見ている事に気付いて振り返り――――

「ちょ――――何、あれ?」

 人混みの中心、衆人環視の中。駅前広場の噴水をバックに、革手袋の手を振るスリーピースのスーツ。

『――――ハァイ、良い子の皆も悪い子の皆もこんばんはウサ!』

 まるでタップダンスのように、三メートル程も跳び上がって軽快に革靴を鳴らして着地。そして合成音声丸出しの、やたらにハイなイントネーションで喋る――――

『ボクの名前はウォッキーラビット。よっろしっくピョン〜!』

 恭しくお辞儀をする、兎のぬいぐるみ頭の大男であった。

「……もしもし、麦野ですか。はい、今、超見付けました。はい、超目立つ事をしてます……こっちの予想の、超上をいくレベルで。画像ですか、分かりました」
「あれは、あの……結局、頼まれても関わり合いになりたくない訳よ」

 完璧に異常者を見る目付きで後退るフレンダ。対し、絹旗は驚きから立ち直ったらしく、淡々と言われた事を熟す。
 画像付き通話で、『ウォッキーラビット』と名乗った男がジャグリングや軽業を披露するさまを……通話先の相手に届けていた。

『――――アッハハハハッ! 良いねぇ、良いじゃないさ。良い感じに頭のネジがブッ飛んでるじゃない』

 と、通話相手が喝采した。まだ若い、しかし此処に居る二人には無い、『貫禄』のようなモノがある、女性の声だ。

「それじゃあ、麦野?」
『そうねぇ――――適当な理由を付けてブッチするつもりだったけど。気が変わったわ』
「えぇ〜……麦野、本気ぃ?」

 興味のなさそうな絹旗と、興味津々の『麦野』と呼ばれた女性。そして、心底嫌そうなフレンダの三人。
 その視線を一身に受ける対馬嚆矢……恥ずかしさを勢いと『何も考えない事(無念無想)』で誤魔化している、兎頭の『空っぽ頭(エア・ヘッド)』。

『第一試験は合格、二次面接開始だにゃ〜』

 月が見下ろす道化は、只只渦中に自ら歩み入る。どうやら、まだまだ彼の夜は長そうだった。


………………
…………
……


 無心である。ただ無心に、嚆矢は――――昔、『とある園地の象徴偶像《マスコットキャラ》』の某鼠っぽくオーバーアクションに振る舞う。八つの球のジャグリングを成功するだけではなく、わざとトチって頭に八連発で当てたり、バク転の着地でわざとトチって、股間を強打したり。笑いを取る、道化を演じる。
 何となく『今回の相手』は、これくらいしないといけ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ