第九話 喪失
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が消せたら、私はそもそも神様転生などしていない、影響についてもわからないのは当然だと自分に言い聞かせた。
「わかりました。話はそれだけですか?」
「それだけですが……あなたの元いた世界の様子を見る事ができるんですがどうしますか?」
「見ます」
小池さんは頷くと私が初めてあった、スーツ姿になった。
「辛くなるかもしれませんが?」
「大丈夫です」
小池さんはどこからともなくiPadを出すと、画面をタップした。そして、私のいた世界の様子がiPadに映し出された。
『ミレイ……ミレイ……。ううっ』
母親はテーブルに突っ伏し泣いていた。
『しっかりしろ。俺だって辛いしここでふさぎこんでたらあの子はどうするんだ』
父親が言った。(因みにあの子と言うのは私ではなく、妹の小宮山カナだ。)
『何であなたはそんな平気そうなの!?ミレイが死んだのよ!それも飲酒運転したトラックに跳ねられてよ?』
『俺だって平気じゃない!けど仕方ないんだ!これからの為にも塞ぎこんでちゃいけない。ミレイはもうどこにもいないんだ!』
「私は此処にいるよ!どこにもいないんじゃない!私は此処にいる!」
意味のないことだと知っていながら私は言った。
『だから早く日常に戻る事が大切……なんだ……』
父親の顔が歪み、母親を抱きしめ2人は泣いた。
もう私には見ていられなくなった。
「もういいです」
小池はiPadをしまった。
「小宮山さん……」
「私なら大丈夫です。小池さんもする事があると思います。では、お休みなさい」
そう言って、私は小池さんと別れ寝室ではなくテラスに出た。
そこで、私は泣いた。大丈夫なはずがなかった。
しばらくはそこで泣き続けていた。
「ミレイ?」
アベルの声がした。
「何で泣いてるの……」
「辛いこと思い出しちゃった」
「辛いこと?」
「うん。もう家族に私は戻れないことを」
「ミレイ……」
「私ね、どっかの誰かの所為で今まで住んでいたところも友達も家族もみんな失った。もう私はあそこに帰れない」
話す内に私は気がついた。何故自分がこの世界を選んだのかを。きっと私はアベルと自分を重ねていた。同じ、誰かの所為で今まであったものがなくなってしまったから。私は同じ悲しみを理解し、慰めてくれる人を求めていたんだ。
「ぼくも同じだ。光の教団に父を殺され、10年もの歳月を奴隷として過ごしていた」
「アベル……」
「ミレイ、君が今までそんな事を言わなかったって事は我慢してたんだね。もう我慢する必要はないよ」
私は気がついたらアベルを抱きしめて泣いていた。
アベルは優しく私を抱きしめてくれた。
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