第百五話 テューポーンその十二
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それでだ、樹里が今聡美に共に下山を勧める真の理由はというと。
「一人でいるより」
「三人でいる方がですね」
「下山も楽しいと思いますから」
「確かにそうですね」
聡美もだ、微笑みになって答えたのだった。
「一人で山を下りても」
「面白いにしても」
「寂しいです」
実際にそうだと言うのだった。
「だからですね」
「はい、三人で下りますか」
「そうしましょう、それでは」
「一緒にですね」
「山を下りて」
こう話してだ、そしてだった。
三人でだった、上城達は山を下りたのだった。その山を下りる中で聡美はその山の中を見回しつつこう言った。緑の木々や透き通った水を。
その中でだ、こう言ったのである。
「木、そして水の声が聴こえますね」
「そうですね、いいですね」
樹里もそうしたせせらぎを聞きつつその聡美に応えた。
「山にいますと」
「はい、ニンフ達の声が聴こえます」
「ニンフですか」
「はい、彼女達です」
「ニンフはギリシア神話の精霊達ですよね」
「そうです。ですが」
本来はギリシアにいる存在だ、しかしというのだ。
「彼女達は日本にも来ていてです」
「この六甲山にもいるんですか」
「そうです」
その通りだというのだ。
「日本の妖怪達と仲良くしていますね」
「日本にもニンフがいるんですね」
「妖精達もいます」
彼等もというのだ。
「アイルランドやスコットランドから来た」
「イギリスですか」
「イングランドやウェールズからも来ていますね」
「イギリス、ですね」
聡美の挙げた国々の名前からこう言った樹里だった。
「まさに」
「はい、ですが村山さんは」
「イギリスって言うことがですか」
「そこに何かこだわりが」
「いえ、アイルランドは独立していますけれど」
それでもだというのだ。
「あの辺りって長い間一つでしたから」
「しかしかつてはです」
「四つに分かれていましたね」
「そうです、ですから私は四つに分けて言いましたが」
「私的には一つのイメージで」
それでイギリスと一括りにして言っているというのだ。
「言いました」
「そうでしたか」
「悪かったでしょうか」
「いえ、別に」
そう言われるとだった、聡美いしても。
「特にそうは思いません」
「そうですか、それじゃあ」
「はい、何はともあれです」
聡美は微笑み周りを見回しながら言うのだった。
「今は下山しながら」
「そうしてですね」
「自然とそこにいる彼等を見て楽しみましょう」
「あの、ですが」
上城はこのことについては苦笑いでだ、聡美に答えた。
「僕達にニンフは」
「見えないですか」
「はい」
そうだというのだ。
「人間には」
「そうでしたね、しかし」
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