番外12話『約束の時』
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トトとの会話がハントの中に浮かぶ。
必死に涙をこらえようとして、それでも零していた涙を浮かぶ。
国を、息子を、国王を、それら全てを愛し、それでもまだ諦めずに必死になって砂を掘っていたら彼の顔が、浮かぶ。
気づいたときにはもう、反射的だった。
「……っ!」
ハントの体は、もはや意志とは無関係。ただ、本能に従って動き出す。
体の向きを反転させて、徐々に速度を増している砂嵐へと駆け出した。
ついさっきはハントの体を取り込み、巻き込んだものの規模が小さかった砂嵐だっが、既に近くづことさえ難しいほどに成長していた。取り込まれることすらなく、ただ風の猛威に弾かれそうになる。
――行かせるかよっ!
砂に足を突き刺して、そこから拳を腰だめに構えて、砂嵐を目標に放った。
「魚人空手陸式、数珠掛若葉瓦正拳!」
以前、雪崩を魚人空手陸式奥義で霧散させた時のように、今回もそれを狙っての魚人空手陸式。
数瞬の後。
大気を振動させ、対象が含んだ水分に連動し、それらが同時に爆散。
砂嵐に巻き上げられていた砂が中心部で爆発を起こして、大量の砂が中から風に巻かれた……が、それだけ。若葉瓦正拳で規模を落としたはずの砂嵐だったが、瞬く間にその規模を回復させてさらなる成長を遂げていく。
――くそっ!
若葉瓦正拳の威力が足りていない。
砂嵐を瓦解させられないのは、砂嵐が予想以上の速度で規模を増していることもあるがそれ以上にここの環境が魚人空手陸式にとっては良くない。
魚人空手陸式は対象が含んでいる水分とその対象の周囲にある空気を連動で振動させて爆発させるものだ。対象が人物ならば周囲の環境に左右されることは少ないが、今回の対象は自然の現象そのもので、現在の砂漠の土地という自然環境がもろに影響してしまう。
要するに空気に含まれている水分が少ないせいで 普段の威力に比べればおそらくは半分程度の威力しか発揮できていない。
若葉瓦正拳を撃ったすぐからその規模を回復させて、それどころか順調に成長していることからも若葉瓦正拳を何発撃っても意味がない。
――もっと大規模にいくか?
これを打ち消そうなものと言えばやはり奥義の楓頼棒だが、さすがにこの段階で体力を0にしてしまうとクロコダイルに勝てない。
そこまで考えて、ハッとした。
――クロコダイル!
自分が誰と戦っていたのかを。
本来、一瞬のよそ見も許されない相手。
それと相対しおきながら、その彼を完全に頭の中から忘れ去っていた。
「砂漠の宝刀」
思い出した途端に不思議とクロコダイルの声がハントの耳に届いた。
慌てて振り返り、それと同時に武装色を発動しようとして――
それは致命的
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