志乃「絶望という言葉を気安く使うな」
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止められた俺でも、それだけは分からなかった。今思えば、あれは志乃の言葉がトリガーとなって始まったような気がする。逆ギレしたも同然だ。
刺又を構え直し、俺は微動だにしない男と向かい合う。だが、俺はともかく相手にも戦う意思は無いだろう。相手の目を、表情を見れば分かる。
それに、ここで不容易な動きをすれば、再び悪魔が目覚めかねないのだ。この場であいつを止められるのは、少なからず俺しかいないんだから。
そして、俺は気付いていた。志乃は、自分を犠牲にしてまで嘘を吐いて、俺に武器を与える時間をくれたという事に。囮となった事に。
なんてバカなんだろう俺は。妹を危険な目に遭わせて。きっかけは分からずとも、こいつをキレさせてしまった。一人の男を今度こそ『絶望』させてしまった。
志乃が言っていた警察が来るというのはデマだ。なら、俺がやる事は一つしかない。
対話だ。
もしかしたら、平和的な解決が出来るかもしれない。この場を傷一つ負う事無く出る事が出来るかもしれない。俺のコミュ力と機転の無さからしてその確率は米粒一つぐらいに小さいが、それでもやらなきゃ何も変わらない。いつまでもゼロのままだ。
その時、虚ろな目をした男の後ろから二人の男が出てきた。銃持ちの二人だ。
手に握られた黒くて重そうな物体を改めて視認する。ああ、これマジでヤバい。パチモンじゃねぇ。
俺は足がガクガク震えそうになるのを、奥歯を食いしばる事で必死に止める。だが、心拍数はみるみる内に上がっていき、いつの間にか呼吸が乱れていた。額に汗が滲むのが分かる。
だが、ここで怖じ気ついたらダメだ。本物の銃を見て冷静でいられるのは異常だ。でも、怖がり過ぎるのも良くない。相手の余裕と安心感は大きくなり、花が少しずつ咲き誇るように確実的なものになる。花びらが散る頃には、俺は撃たれているんだろう。
だから、俺は相手の目を見据え、じっとしていた。視線を逸らしたら負け。その時点で俺と敵の明確な優劣の差が浮かび上がる。
勝てるだなんて思っちゃいない。思ってたら対話なんてするか。
ここに気合いや牽制の意味での奇声が飛び交ったら剣道になるんだろうな。そんなどうでもいい事を思いながら、俺は縮こまった喉を開くべく深呼吸した。歯がガチガチと鳴りそうになるのを堪える。
「……その、アンタ達は何でこんな事してんだ。意味が、あるんだろ」
「君にそんな事を言う必要性を感じないな。それよりも我々の指示に従っていた方が、君達にとっても有利だと思うが」
くそ。会話にもならない。だが、言葉を噛む事無く言えたし、相手はそれに返答してきた。それだけで俺の中の極度な緊張感は幾分かほぐれてきた。
俺の言葉に返してきた、頭を禿げ散ら
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