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相棒は妹
志乃「兄貴、手離して」
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暗闇である。志乃は暗いところが苦手なのだ。理由は聞いた事が無いので知らない。

 さっき、俺と志乃が真っ暗なカラオケボックス内にいた時は普通に話していたが、実際内心でビクビクしていたんだろう。そこで俺がなんか言えば、志乃は怒るのであえて言わなかった。

 俺が志乃の手を掴んだのは、あいつに恥をかかせないため。

 上から目線っぽいけど、そういう風にしか説明出来ない。志乃が俺に対してプライド高くなけりゃ、他に言い方はあるけどさ。

 あいつに「兄貴、手、掴んで」なんて言われたら、それは地球の崩壊だ。そんな世紀末な現象が起きるわけが無い。

 だから、俺の方から行動を起こす他無かったのだ。

 そんな俺の考えを理解しているのかは分からないが、志乃は顔を真っ赤にして、何故か俺を睨みつけている。いやいや、俺何も言ってないじゃん。

 にしても、この状況。どうすれば良いのだろうか。

 とりあえず、志乃にこの後の事でも聞くか。

 「志乃、この後どうする?」

 俺としては、テンションが下がったのでもう帰りたい気分だったのだが、それを押し通すわけにもいかない。志乃に意見を聞くのは必然的だ。

 すると、志乃は俺を通り越して、その先の方へと視線を向けている。その顔には、珍しく驚愕の表情が貼り付けられていた。

 疑問に思った俺も、後ろを振り返ってみる。そこには俺達がいたような室内に続くドアばかりが続く筈なのだが――

 「……お前は」

 そんな俺の呟きが聞こえたのか、そいつは俺達に笑顔を向けてきた。

 そして、そいつは俺達に向かって突拍子の無い事を聞いてきた。


 「こんにちは!二人はもしかしてデートの途中かな?」

 ……こいつ、頭の中お花畑なんじゃねぇの?俺と志乃は兄妹だぞ?デートとかマジであり得ねえから。

 つか、待ってくれ。こいつ、誰だよ?

 志乃なら知ってるかもしれない。ちょっと聞いてみよう。本人いる前で失礼かもしれないけど。分からなきゃ話すら出来ないし。

 そこで後ろを向いて、志乃に視線で意図を告げようとしたのだが……。

 何であいつ、ボケーっとしてんの?視点合ってないぞ、おい。まだ暗闇のこと引きずってんの?

 「あれ?私の声聞こえてる?もしかして無視?それは悲しすぎるな〜」

 くそっ!ちょっと黙ってろお前!今お前との会話のために名前思い出そうとしてんだよ!

 「もしかして、私の名前覚えてない?私の名前は五十嵐蘭子っていうんだけど」

 あー、五十嵐さんね、五十嵐さん。実際分かんないけど。

 とにかく、再起不能な妹に代わって俺が喋るしかない。別に女と話すのが苦手なわけでもないしな。


 「えーと、五十嵐だっけ?俺らの事覚えて
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