志乃「兄貴、手離して」
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ったのだ。
つまり、真っ暗。俺と志乃は暗闇の箱の中に閉じ込められてしまったのだ。つか、ドアの向こうが見えない仕様とか、普通あり得ないだろ。停電になった時の事ぐらい考えとけよ。
急いで携帯を出して、明かりを生み出す。室内は狭いので、変なところにぶつけたりすると危険だからだ。
その時、自分の前に座っているであろう妹の声が口を開いた。
「そう。兄貴、やっと私の言いたかった事、分かったんだ」
「まぁな」
そう言いながら、ライト代わりの携帯を入口に向ける。とりあえず、この室内から出ないとな。
「志乃、とりま出口行こうぜ。どうせ停電だろうし」
「分かった」
その返答を聞いた後、俺は明かりを志乃の方にやって、視界から見つけた志乃の手を掴む。
「え?」
なんか志乃が驚いてるみたいだけど、特に気にしない。だって、俺一人で出口まで向かうとか意地悪じゃん。
そんな事をいちいち口にするのも面倒なので、俺は志乃の手を掴んだまま歩き出す。
「足元気をつけろよー」
適当に注意を促し、携帯の明かりを頼りに出口の元へと進んでいく。とは言っても、室内の小ささからすぐに辿り着いたが。
ドアを開けると、視界いっぱいに色が飛び込んできた。辺りは薄暗く、電気が通っていないのが良く分かる。昼間だったのは本当に運が良かったとしか言えないよな。
「ったく、この分の料金は引いてくれんのか?」
そんな独り言を呟いていると、後ろから志乃の声がする。
「兄貴、手離して」
あ、忘れてた。って、ちょっと待て。
「お前、なんか震えてね?」
そう聞いてみると、志乃は首がもげそうになるぐらいに首を振る。否定しているようだ。
だが、俺だって志乃の兄貴だ。幼い頃は仲良く遊んでいたわけだし、こいつの事を全く知らないわけじゃない。
だから、俺は志乃の今の感情を的確に当てる。
「志乃、お前今……」
「そんな事無い!」
って、俺の声に被せんなよ。つか声でかい。普段は俺をバカにする時ぐらいしかちゃんと喋らないから新鮮だな。
志乃はいつも以上に肌を白くさせ、顔は少し青ざめている。体操服を着ているからか、授業中に腹壊した人みたいになっている。これはこれで面白いわ。
だが、そんな事を本人に言えばマジで殺されかねないので、その代わりに呆れた調子で声を掛ける。
「志乃さ、暗いのが怖いってのは小学生で卒業するもんだぞ」
「……う」
さすがに自分でもそう思っていたのか、志乃は言い返してこない。常識人だから無駄に反論してこないのは良い事だけどな。
こいつにも、勿論苦手な事はある。
その一つが
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