教会
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《二回戦 六日目》
目に移るのはこの世のものとは思えない黒く濁った泥。
そして、それを背に笑う言峰と頭を鷲掴みされ動かないエミヤシロウ。
「教会に凛と現れたお前を見て、切嗣の再来を喜んだものだが……………所詮は使い物にならぬ、できそこないの贋作だ」
首が体という振り子を支え、その重さに耐え切れずにギリギリと悲鳴を上げている。
鷲掴みにされた頭も、痛みと壊れ行く過程を宣告していた。
なにしろ、人一人を片手で持ち上げる程の握力だ、この後に想像するのは割れた卵。
「だが、ここ十年退屈を、一時とはいえ愉しませたのもお前という存在だ。 褒美をやるぞ、衛宮士郎。 お前には、切嗣と同じ末路を与えてやろう」
鷲掴みしていたエミヤシロウを投げ飛ばし、後ろにある泥を手に集める言峰。あの泥はなんだ?
見ているこっちが不安や恐怖に押しつぶされそうだ。サーヴァントと対峙した時も恐怖などがあったがそれとは比較できない。
これは根源的恐怖と言ってもいいくらいだ。あれに関わってはいけない。
「いくぞ。受け取るがいい」
言峰の言葉に反応したのか、後ろの泥は何本かの触手のようなものになり、エミヤシロウに襲いかかる。
「この世全ての悪」
その泥にエミヤシロウは、飲み込まれると同時に俺の目の前も真っ暗になった。頭の中に声と映像が流れ込む。
…………………せ。
道端にゴミをポイ捨てしている奴の腕を折る。 電車の中で電話をしている相手の耳を引きちぎる。 カンニングしている目を抉り出す。 人を殴った手を握りつぶす。 虫を踏んだ足を切り刻む。 通りすがりにブツカッタ肩を叩き潰す。 盗みを働く指から爪を引き剥がす。 道を塞ぐ集団の背骨を砕き割る。 陰口を叩く口を引き裂く。 詐欺を為す頭から髪をこそぎ落とす。 強姦を犯すソレを切り落とす。
…………………こ…………せ
金を拾った者の頚動脈を切る。 占いで良い結果を得られた者の首を絞める。 生活に不自由がない者を轢く。 試験で満点を得られた者の突き落とす。 昇進できた者に火をつける。 恵まれた容姿を得たものを深海に沈める。 友人が多い者の血液を抜き取る。 よい女を連れた者の体を切り刻む。 勝利を得た者を殴り倒す。
………………ころ………。
幸せそうな家族を、街中を颯爽と歩く女を、力強く駆ける男を、 純真に泣く赤子を、親に玩具をねだる子供を、子を連れて歩く母親を、 家族のために働く父親を、生きる気力を無くした中年を、余生を楽しむお年寄りを、 笑う者を泣く者を悲しむ者を喜ぶ者を怒る者を叫ぶ者を寝る者を歩く者を皆ミンナ みんなミんなみんなミンなミンナスベテ
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