EPISODE6 幼き約束
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「そう。まあ小さい頃にしたものだからぶっちゃけ覚えてるかどうかも怪しいんだけど」
そう苦笑する鈴。彼女はどこか淋しそうな表情だった。
小さい頃、プロポーズまがいの約束をしたらしい。箒といいセシリアといい、一夏ほモテモテだな。それだけ彼に女性を惹きつける魅力があるということだが・・・・
(ふだんの一夏を見る限りは覚えている確率は低い・・・・なんて口が裂けても言えないな」
「口にでてるわよ」
「マジか」
「マジ」
今度はため息。
「その・・・・なんだ。まがいなりにも覚えてるはずさ。男女のそういうのは僕にはよくわからないが、一夏は一度した約束は覚えている。義理堅い人間だからきみががっかりすりようなことには少なくともならないと思う」
一夏とはまだ知り合って一か月もたってないが、それなりに彼のことを理解しているつもりだ。
義理堅く、正義感にあふれて極めて鈍感。僕のもってる一夏の内面の印象はそんな感じだ。
「・・・・やっぱ優しいわね。あんた」
「・・・・さあね。自分が優しかったかどうかなんてことすら思い出せない」
「随分とヘンなこと言うのね?」
「・・・・記憶がないんだ。だから自分のことは何一つわからない」
「・・・・ごめん」
「謝る必要はない。きみも自分のことを話てくれたんだ。男の僕が女の子の秘密を知っていて自分のことは何も話さないなんてフェアじゃないだろ?」
「いや、あんたのはそういうレベルの秘密じゃないから」
そういうものなんだろうか?
◇
程なくして事務局に到着して鈴と別れた。別れ際に「あんたとはなんだか気兼ねなく会話ができそうだからまた話相手になりなさいよ」となぜか命令口調で言われた。そういっていた彼女は類に見ないほど明るい笑顔だった。
しかし約束・・・・か。
―――――なら、約束です。また私に・・・・を教えてくださいね?
「ッ!?」
一瞬、頭になにか浮かんだ。これは記憶を失う以前の記憶か?
だが一瞬うかんだだけで具体的になにかはわからない。
(いったい、僕は彼女と何を・・・・?)
考えてもでない答えを、自室に向かいながら問いかけ続けた。
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