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空を見上げる白き蓮 別事象『幽州√』
第二話 彼の思惑は彼女達の為に
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の内を見透かそうというように。
 口の端を片方だけ上げて見せると、ほんの少し驚いたようだ。
 この時代との価値観の違いで……俺は劉備の雰囲気には流されないし、心打たれる事も別に無い。こういった人間がどれだけ希少かも分かってるが、いい所も悪い所も知ってるのだから。
 気にせず視線を前に向けて、次の質問をぶつける事にした。

「では……そうですね。あなたが目指すモノをお聞かせ頂いてもよろしいですか?」

 ハッと顔を上げた劉備の雰囲気が変わる。緩やかなプレッシャー、多分これが覇気ってもんなんだろう。胸に抱く想いの強さから、何かを為さんとする王だけが持てるモノ。白蓮が幽州を一緒に守って欲しいと言った時もこんな感じだったか。

「私は誰もが笑って暮らせる争いの無い優しい国にしたくて、それで義勇軍を立ち上げました。犠牲になる兵隊さん達の命を背負ってでも、人が理不尽な犠牲にならない暖かい国を作りたいんです」

 関靖の雰囲気がほんの少し冷たく変わった。同時に、何故生理的に受け付けないのか分かってしまった。
 劉備は王だけど王じゃない。この子はまだまだ発展途上。
 辿り着く先は民側に立つ希望の標。覇道に対する最高の対抗者。人を和で繋いで行く弱者の為の王。そして……天下を統一するなら矛盾を背負うしかない哀しい大徳。
 関靖が生理的に受け付けないのは、守る為では無く、後々上に上がっていくのに矛盾を背負う事を知らずに理想を追いかけているからか。迷わず追いかけ続けるなら意味があるんだが……白蓮をずっと見てきた関靖が拒絶するのも仕方ない。
 ちょっと質問を変えてみてもいいが、白蓮との今後もある。出来る限り仲を悪くしたくない。
 関靖はきっと、民の心が揺さぶられつくす前に劉備達を追い出したいんだろうけど、もっと別の使い方をした方がいいな。乱世は長いし、此処は徐々に友好を深めて、白蓮の手助けが多くなるようにしよう。

「へぇ……いいですね。そのような世界になれば、きっと皆は平穏に生きられるかと」
「うん! 皆が手を繋げるようになれば、きっと楽しい世の中に出来ますよ! 白蓮ちゃんみたいに平和の為に協力してくれる優しい人だっているんですから!」

 ほわーっとした空気を放った劉備。最近仕事ばかりで白蓮達の苦労が痛い程分かったのもあってか、曖昧でおぼろげな理想を目指す純粋な彼女を見て、俺の胸に少し黒い感情が蠢いた。

――前言撤回。なんで仲良くなるまで待たないといけないんだ。関靖も白蓮もそうしてる間に倒れたらどうすんだよ。それに、白蓮とゆっくり話も出来ない内に乱世が始まるなんざごめんだ。とりあえず、身近な人がどれだけ苦労してるか知って貰おうか。

「クク、では聞きましょう。あなたが義勇軍として白蓮の所に来て、どんな――――」
「このバカ! 
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