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第四十二話 紅と白
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合宿は二日目に入り、僕らは再び海岸に集合している。この日は午前中から丸一日ISの装備試験運用とデータ取りに追われることになる。当然、専用機持ちはフル稼働のため一般生徒以上に忙しい。
「よし、では班ごとに割り振られたISの装備試験を行え。事前に説明があったように専用機持ちは別行動だ」
千冬さんの指示のもと、一般生徒と専用機組がわけられる。
一学年全てがそろっているので、かなりの人数が動く。その中に、なんとも言えない表情でこちらを見る箒さんの姿があった。気持ちはわかるのだけれど、こればかりはどうしようもない。
「あいや、あいや待たれ〜い!」
とそんな折、気の抜けるような誰かのかけ声が響いてきた。いや、誰かと考えるまでもなく束さんだ、うん。チラッと千冬さんを見たら怒気と呆れが混ざったような凄い表情をしていた。
いったいどこから、と周囲を見渡すけれど姿は見えない。しかし何やら甲高い音が聞こえてくる……空から。
空? とふと見上げると巨大な人参が地上に向かって降ってくるところだった。え、どういうこと?
どうやら他の生徒も気付いたようで軽いパニックが起きている。とはいえ、おかげで落下予測地点の周りには誰もいなくなった。
謎の飛来物は落下する勢いのまま、砂浜へと突き刺さる。
ビーチにそびえる巨大人参というシュールな光景に頭が痛くなる。やがて、そのオブジェは真っ二つに割れ、その場の全員が注視する。ゴクリ、と誰かの息を飲む音が聞こえた気がする。
「ちーちゃーげぶっ」
しかし、声が聞こえてきたのは謎の物体からは離れている千冬さんがいる方角だった。慌ててそちらを見ると、千冬さんが束さんの顔面を鷲づかみにしているところだった。どうやら人参を囮にして生徒達に紛れて近づき、千冬さんに不意打ちで飛びついたところを迎撃されたようだ。
奇襲に対応した千冬さんを褒めればいいのか、直前に声を出した束さんに呆れればいいのか。
「うぅ、愛が痛い」
そんなことを僕が考えているうちに解放されたのか、束さんが頬をさすりながらトボトボとこちらに歩いてくる。
「しーちゃん、慰めて〜」
情けない声を出しながら、僕を見上げる。
同時に周囲の視線が僕に集まる。当然だろう、去年いた人なら僕と束さんが親しいことを知っている人は少なからずいるけれど、今の一年生ではそれを知る人はほとんどいないはずだ。
とはいえ、ここで無碍な対応をして後で拗ねられるほうが面倒なので、苦笑しつつも僕は彼女の頭を撫でながら慰める。ただ、ちゃんと笑顔かは自信がない。いや、確実に引き攣っていると思う。
「はふぅ、やっぱり癒やされるね、ありがと。おっと、そうだ。えぇっと……あ、いたいた。やぁ、箒ちゃん! それにいっくんは昨日ぶり
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