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第四十二話 紅と白
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だね」
蕩けるような、だらしない表情を浮かべていた束さんは思い出したかのように辺りを見回し……というか頭上のウサミミが指し示す方角を見て、目的の人物を見つけると駆け出す。もちろん、その相手とは箒さんだろう……織斑君はどうかな、昨日も会っているようだしついでかな?
ところで、一応彼女は学園から見たら部外者ということになるんだけど大丈夫なのだろうか、と千冬さんをチラりと一瞥すると何やら山田先生に指示を出しながら生徒を纏めていた。どうやら昨日の訪問でこうなることは予測していたようだ。
「……どうも」
「あ、はい、どうも」
織斑君はともかく、箒さんは直接会うのは数年ぶりになるはずだ。だからかは分からないけど、ずいぶんと他人行儀に感じる。
「あの、お姉様……あの方が篠ノ之博士ですの?」
「あ、はい。そうですよ、俄には信じられないかもしれませんが」
ふと、セシリアさんが耳打ちするように問いかけてくる。まぁ、確かにあの人がIS開発した凄い人ですって言ってすぐ信じるのは無理だよね。
「そうですか! 是非一度お会いしてわたくしのISを見て頂きたいと思っていたのです」
「そ、それは止めたほうがいいかと思います。その、彼女はとても偏屈といいますか。ご家族の方や特定の人間以外には酷く辛辣になるのです。おそらく、話しかけたとしても嫌な思いをするだけかと」
間違いなく、そうなるだろう。彼女が正しく顔と名前を認識している人間なんて両の手で足りるくらいしかいないと思う。それ以外は路傍の石と同じような扱いだ。
「そう、なんですの。ですが、お姉様はずいぶんと親しいようにお見受けしましたが?」
「幼いころに縁がありまして。千冬さん……織斑先生ともその頃からよくしていただきました」
「ま、まさか本当に一夏さんの許嫁……」
「いえ、ですからそれは違います!」
何やら話が思わぬ方向に飛んでしまった。
僕が紹介してあげるという手もあるのだけれど、以前に楯無さんと鉢合わせた時のことを考えるとあまりやりたくない。どういう訳か彼女とは波長が合ったようだけど、他の人も同じとは限らないし何故か僕の心労が増える気しかしないので今回は提案しなかった。
「さぁ、今こそお披露目するよ! この天才束さんが開発した、箒ちゃんの箒ちゃんによる箒ちゃんのための専用IS『紅椿』、現行ISのすべてを凌駕するスペックを持っている珠玉の逸品だよ!」
気付けば、箒さんの専用ISが発表されていた。やはり束さんの贈り物とは専用ISだったようだ。というか、その謳い文句とかいろいろ間違っている気がする。ツッコむ人間は誰もいないけれど。
束さんのかけ声とともに、先ほどから突き刺さったままの人参モドキから何かが射出され、それは再び轟音
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