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シルエットライフ
受け取った女の子の話
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を上がり、三階の廊下に出た。
右の方に少し進み、自分のクラスである、二年A組の教室の扉を開ける。
横に滑る扉が、転がるような音をたてながら、開く。

教室の中は、屋根に縦一列に貼りつけられた蛍光灯に照らされているものの、
雰囲気は明るいとは言えなかった。

男子生徒が教室の端っこで、円陣を組むように、縮こまりながら話し合っている。
その近辺の机が、水に投げ入れられた石の作る波紋さながらに円の邪魔にならないようにどけられている。
どけられた机に圧迫されるように、狭い空間にどうにか座っている男子生徒が、苦々しげな表情をしていた。

教室の中には、既にいくつかのグループが形成されていた。
明るい男子生徒達の塊、暗い男子生徒達の塊、派手な女子生徒達の塊、平凡な女子生徒達の塊。
自分の机の上に鞄を置き、その上にマフラーを外して被せるように置いてから、平凡な女子生徒達の塊の中へと混じっていった。

「おはよ、郁子。今日も可愛いよ」

(りん)こそ」

このグループは、四人の女子生徒で形成されていた。
ちょっとぽっちゃりとした、まあ、実際は肥満体型の(あん)と、それなりに可愛い、小柄な凛と、見た目は地味だがユーモアにあふれ、成績優秀な(らん)の三人と、私だ。
私以外は全員名前が二文字で、「ん」がつくため為、どこか親近感が湧いているのだろう。あん、りん、らん、だ。
グループとは言うが、私は心のどこかで、彼女らとの距離を感じていた。
彼女ら三人衆を鯨とするなら、私はコバンザメだろう。
実際、グループにはそういった意味もあった。学校生活を楽しくする為、助け合うため、身を護る為、だ。
今の時代、孤立している人間から、悪意の食い物にされてしまうものなのだ。
だから、皆身を寄せ合う。人の上に立っていないと不安になる。皆と同じじゃないと除け者にされる。村八分だ。

先に来ていた三人と挨拶をしてから、世間話と愚痴をべらべらと語り合う、普段なら、私はそうしただろう。

「ねえ、今更なんだけどさ」

「何を今更」

「まだ言ってないって。あのさ、榊原君ってどう思う?」

榊原君の名前を出した途端、三人の表情が凍りついた。
しまった、タイミングがまずかっただろうか?
高揚していたせいで、判断力が鈍ったのかもしれない。

「どうしたのよ、好きなの?」

この年頃の女の子の二言目には、好きな子いるの、だ。
全ての女の子がそうとは限らないが、少なくとも、目の前の三人はそうだった。瞳が爛々と輝いている。

「べつに、そんなんじゃないよ」

至って平凡な、どこにでもある会話、それを意識する。
気取られてはならない。敵に回してはならない。

「六番の、榊原君でしょ。かっこいいよね。男子の中のま
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