第二部 vs.にんげん!
第23話 いのちのねうち!
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。言ったところで、何を支えに気を確かに持つ事ができるだろう。もはや食料もない。体力もない。この場所を離れて、避難所になりそうな他の場所に移る事は難しい。
あなたにはその子を守る義務があるはず。
そう言えばどうだろうか。しかし、その言葉は残酷な言葉の凶器となる。近い将来……今日か明日には。
かつて母であった女は、結局沈黙を選び取る。亡き息子が残した赤子、消えゆく命、その現実を誤魔化しうる言葉などある筈がなかった。あるいは、教会の門が開かれる、その希望以外に。
がさり。
難民たちの背後で、下草が鳴る。
振り向いた老女は、胸を打つ衝撃の正体を知る事はなかった。長い長い魔物の舌、それが痩せた胸を貫き背中まで飛び出ている状況を知る事はなかった。目のない二本足の巨大トカゲ。その大群を明瞭な意識で把握する事はなかった。それが、カルス・バスティードの冒険者たちにケイブバイパーと呼ばれている事など知る由もなかった。
老女は逃げ惑う人々の喧騒も、間もなく息子の嫁と孫が同じく殺されてしまった事も知らずに済んだ。
夕刻を待たずして、森には魔物が人を屠る、ピチャピチャという湿った音が響くのみとなった。
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