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SAO−銀ノ月−
第六十六話
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落とさずにこちらへと接近してくる。再びあの包丁の射程から逃れようとするが、背後にはリズとレコンがいる。奴と二人を戦闘させられない為に、これ以上後ろに逃げることは出来ない。俺は日本刀《銀ノ月》を正面に構えると、その場で防戦をすべく立ち止まる。

 ただやみくもに攻撃をしたのでは、どのようなタネなのかは分からないが、奴に攻撃が当たることはない。だが、俺を攻撃する一瞬には、必ずそこに『ある』筈だ。何故ならば、そこに包丁があるからこそ、俺はダメージと痛みを感じているのだから。

 しかし、俺がカウンターを狙っているということは見て取れるだろうに、奴は恐れることを知らないように、そのままこちらに向かって来る。どのような攻撃をもらっても、すり抜けてしまう事への自信の現れか、鼻歌も歌ったままの無警戒の突撃だ。

「せいぃっ!」

 ……油断をしているならば好都合だ。胸部を突き刺すように放たれた包丁を支える腕を斬り落とすべく、カウンター気味に斬り上げる。日本刀《銀ノ月》は寸分違わず、包丁が俺の身体を突き刺す瞬間に、PoHの右腕を切り裂く――事はなく、やはりPoHの身体に触れることすら出来ず、日本刀《銀ノ月》は空を切る。

 だが、包丁が突き刺されたはずの俺の身体には、縦一文字に胸部が切り裂かれており、先の横薙を含めて十字架のような傷が創り出されていた。もちろんその傷口からは、現実世界で実際の刃物に斬られたように、鋭い痛みが身体中に響き渡っていく。

「が……あぁっ!」

 俺はその痛みに耐えかねて、傷口を抑えて隙だらけになって日本刀《銀ノ月》を橋に刺し、それを支えにして何とか立っていた。PoHはそんな俺の様子を笑って見ながら、包丁をクルクルと手の中で回して鼻歌を吹くだけで何もしない。もちろんお互いにお互いが射程内で、PoHに至っては包丁の適性距離であるにもかかわらず。


 何故こちらの攻撃は幻影のように空を斬り、あちらの攻撃は現実世界のように痛みを発生させるのか――痛みによって乱れた息を整えながら、頭をフル回転させてその理由を探る。……だが、そうすればそうするほど、俺の脳内にはアインクラッドの出来事が去来する。アインクラッドでPoHと決着を付けて乗り越えたはずの、仲間がみんないなくなった時と、一度殺された時の恐怖がまた蘇って来てしまう。

 アインクラッドを忘れようとしていた俺に対する、耐え難いトラウマでもある過去からの使者。その死神のような格好に、PoHという男。そして、こちらの攻撃をすり抜けるところなど――

 ――まるで、亡霊のようではないか。

「さっきも言ったが、相変わらずchickenだなぁ《銀ノ月》」

 そうして動こうとしない俺に退屈したのか、奴の適当に放った蹴りが放たれ、やはり防御をすり抜けて俺の顎を蹴り
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