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久遠の神話
第百四話 最後の戦いの前にその十三

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「俺はそうした酒は飲まない」
「楽しむ?」
「ああ、そうだ」
「人生とかい?」
「そんなところだ」
「ううん、深いね」
 その話を聞いてだ、親父はというと。
 少し考える顔になってだ、こう加藤に言った。
「あんた以外と哲学者だね」
「俺がか」
「そう思ったよ、今」
「確かに大学は哲学科だったが」
 何気にこのことも言った加藤だった、己の出身大学のことも。
「八条大学の」
「ああ、あそこね。俺もだよ」
「親父さんもか」
「俺もあそこの大学出てるんだよ」
 そうだったというのだ、親父も。
「俺は農学部でな、鶏のこと勉強してて」
「それで今はか」
「ここで焼き鳥屋の親父やってるんだよ」
 そうだというのだ。
「面白いよな、それも」
「俺の先輩になるのか」
「学部は違っててもな」
「そうか、しかし俺はな」
「あんたは?」
「今は清掃業だ」
 表の仕事のことも話した。
「それをしてるんだよ」
「清掃業か、あんた」
「そうだ」
 その通りだというのだ。
「そこにいる」
「そうなんだな」
「そうだ、しかし」
「しかし?」
「楽しむ為にはな」
「酒はか」
「選んでいる」
 その飲む酒をというのだ。
「日本酒やビールは飲まない」
「焼酎だね」
「ワインもな」
 それも飲んでいるというのだ。
「飲む」
「ワインかい、うちにもあるぜ」
「そうか、しかしな」
「そっちは今はいいのかい?」
「焼き鳥にはこれだ」
 焼酎だというのだ。
「とはいっても焼酎なら何でもいい」
「芋焼酎でも黒糖焼酎でもだね」
「どちらかというと芋か」  
 そちらの焼酎だというのだ。
「糖分が少ないからな」
「随分身体に気を使ってるね」
「これでもな」
 そうしているというのだ。
「野菜も食べている」
「いいねえ、それは」
「毎朝な、かなりの量の様々な野菜や果物を食っている、豆乳と一緒にな」
「大山倍達さんみたいだね」
 極真流空手の創始者である、朝はかなりの量の野菜を食べてそれで己の健康を維持していたのである。
「それはまた」
「あの人か」
「ああ、あの人は知ってるだろ」
「参考にしている」
 何の参考にしているかはだ、親父には言わなかった。
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