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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十七話 国際協力都市
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父親が戻ってきて嬉しいのだろう。財務尚書と統帥本部総長を伴ったという事は首脳会談は決して楽観出来る状況ではないという事なのに……。

夫達が現れた。表情は硬い、予想以上に状況は良くないのだろうか? 身体が強張るような感じがした。
「御苦労です、遠慮は要りません、こちらへ」
私がソファーを指し示すと夫達が“恐れ入りまする”と身を屈めた。全く、夫婦なのになんと馬鹿げた事をしているのか……。夫達がソファーに座り侍女達がコーヒーを出した。部屋にコーヒーの香りが漂う。夫達の顔に僅かにホッとしたような表情が見えた。

「大事な話が有ります。皆、下がりなさい」
私の言葉に十人連れてきた侍女達が頭を下げて下がった。エリザベートが不安そうな顔をしている。
「エリザベートはここに居なさい。但し、口を挟む事は許しません」
「はい」
ちょっと怯えたような顔をしたが娘は素直に頷いた。

「楽に行きましょう。どうなのです、貴方。思わしくないのですか?」
夫が“うむ”と頷いてコーヒーを一口飲んだ。後の三人もコーヒーを口に運ぶ。
「まあ簡単ではないな。なかなか手強い」
「……」
「思いがけない事を提案されたのだがどうすれば良いのか分からぬ。いや、利が有るのは理解出来る、踏ん切りが付かぬという事かな」
夫が嘆息すると他の三人がそれぞれの表情で同意した。

「フェザーンの独立の件はまあ問題は無いだろう。向こうもフェザーンには気を許していない。こちらと手を取り合ってやっていこうと考えているからな」
「では問題とは? 株ですか、それとも国債?」
私が問い掛けると夫が渋い表情で“両方だ”と言った。

「株はちと厄介だ、国債から話そう。返還を求めたのだがな、断られた。無理な償還は求めない、毎年一千億帝国マルク、百二十年かけて償還してもらえば良いと言いおった」
「一千億帝国マルク? 百二十年?」
私が訊き直すと夫が頷いた。ゲルラッハ、シュタインホフ、レムシャイドの顔を見たが皆渋い表情をしている。エリザベートは目が点だ。

十二兆帝国マルクの国債、使い様によっては帝国を崩壊させかねない危険極まりない爆弾だ。償還そのものを拒否するという案も検討されたが財務省は反対した。国債を持っているのは同盟だけではない、フェザーンにも帝国の中にもいる。償還を拒否すればそれらの人間は帝国に騙されたと恨むだろう。そして今後、帝国が発行する国債を購入する人間は居なくなる。長期的に見れば百害あって一利もない、というものだった。皆が納得せざるを得なかった。

同盟からの償還のみ拒否してはどうかという意見も出た。しかし同盟が国債を第三者に売った場合には意味が無くなるという点が指摘された。ただ徒に同盟の敵意を買うだけだろうと。結局のところ同盟から返還してもらうしかないのだが取引
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