それが君の”しあわせ”?
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とそれもまた彼らの付き合い方なのかもしれない。いずれ彼等も自分と夫のように愛を誓い合えるといいな―――と、考えて。
ふと、よく見たら少女が歩いていない事に気付く。
しかし、歩いていないのに移動はしている。
つまりどういうことかというと―――
(そ・・・そういう事だったのぉぉぉ〜〜〜〜〜!?!?)
少女の身体は下に行くにつれてその透明度を増していき、膝から下は完全に透けて見えなくなっていた。足が存在しないのだから当然歩くことなど出来はしない。そして古往今来、足の無い人というのは―――「幽霊」の代名詞である。
つまり青年は無視していたのではなく・・・ひょっとすると、全く見えてすらいない。牛乳を取ったのは単なる偶然に過ぎず、引きずる形になっていたのは単純に女の子に彼を止める術がなかったから。
カップルというのも自分の勝手な勘違いで、あの子は単に青年に「憑いて」来ただけ―――?
さあっと頭から血の気が引き、代わりに北極の凍えるような冷気を頭から浴びせられるような悪寒が背中を一直線に駆け抜ける。自分の意識と関係なく首の筋肉が変に痙攣して、しかしその幽霊から目を離せない。正直、ちゃんと二本の脚で立っていることを自分で褒めてやりたかった。というか、よく見れば彼女の周囲を人魂のような灯がいくつか回っている。もう疑惑は確信に変わっていた。
全身もよく見れば透けており、この冬の寒さが残る環境下で妙に薄着。足音は当然しないし、移動方法はホバー。唯一救いだったのは、その幽霊がホラー映画に出てくるような恐怖と死を想起させるものではなかったことか。透けている少女は自分が見えていなくても青年を気に入っているのか、そのまま肩車のような体勢で青年の肩に座り嬉しそうに笑っている。・・・・・当の少年は、肩の調子がおかしく感じているのか自分の手で肩をトントン叩いているが。
(それは・・・それは気付かないって・・・!)
この場合、可愛い女の子の幽霊に好かれている事に気付いた方が幸せなのか?
それとも幽霊に憑かれているという衝撃の事実に気付かない方が幸せなのか?
暫く自分の目頭をもんで考えた静枝は、そういえばバイトの先輩が「このスーパーが建つ前、ここの土地には霊能力者の住む屋敷が建っていた。だから霊感のある人にはその影響で、ここに来る幽霊が”みえる”らしい」という噂を聞かせてくれたことを思い出し、そんな話聞くんじゃなかったと後悔した。
少なくともこの事実は、昔からお化けの類が大の苦手な静枝にとっては不幸だったという事だけは間違いないだろう。
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