暁 〜小説投稿サイト〜
【短編集】現実だってファンタジー
それが君の”しあわせ”?
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身を乗り出して一つの牛乳を指さした。青年は、その指さされた牛乳をなんの躊躇もなく手に取り、かごに放り込んだ。漸く自分の願いが聞き入れられたのが嬉しかったのか、少女が青年の首元に抱き着く。相変わらず青年は表情を変えなかったが、静枝はくすりと笑った。

何の事はない、ただ単に彼が素直じゃないと言うだけだったのかもしれない。そうならば、私があれこれ言うのは野暮と言うものだ。今の夫にも、最初自分は素直になれなかった時が多くあった。その溝を埋めたのが、育んだ愛の時間だ。だからあの二人の溝も、きっといつか埋まるだろう。
と、狙いの品を買い終えたのか2人がレジへとやってくる。慌てて微笑を消し、いつもの営業スマイルで出迎えた。

「お会計お願いしまーす」
「ハイ!ポイントカードはお持ちですか?」
「いえ。それと、袋は要りません」

エコバッグを取り出して言う青年に、ありがとうございますと事務的に答える。スーパーのビニール袋を使わないだけで店員がお礼というのも変な話のような気がするが、今はそんなことは良かった。商品をバーコードリーダで次々にチェックしていく。数種類の野菜と惣菜、さっきの牛乳、それに・・・弁当。

(・・・あれ?一つしかない・・・?)

はて、2人いるのに弁当は1つしかかごに入っていない。普通弁当は買ったその日に食べるものだからこの弁当は夕食になるだろうに、何故一人分しかないのだろうか。しばし考えた静枝だったが、恐らく朝か昼の余りがまだ残っていて、それが2人分に届かなかったから弁当一つを追加したのかもしれないと考えた。

「お箸はいくつお付けしますか?」
「・・・?」

そこに至って、青年は首をかしげて不思議そうにこちらを見る。弁当は一つなのだから箸も一膳だろう、と言わんばかりだった。だが2人連れなのだから二膳必要かもしれないと思って聞いたのだが、それほど不思議な質問だったろうか。それとも割り箸など最初から必要ないと言う事か。確かにその方が資源の無駄にならずに済むが、いったん違和感は心の隅に押しやる。

少し間をおいて、青年は「一膳つけてください」と答える。
これはどうしたことだろう。正直、箸は要りませんと答えるとばかり思っていたこちらが逆に面食らった。2人いるのだから二膳でもいいだろうに、今度はまた何故一膳しかいらないというのだろう。まぁいいか。それは向こうが選ぶことだし隣の女の子も気にしたそぶりを見せていない。咄嗟に必要ない箸を頼んでしまっただけかもしれない。疑問は顔に出さず、お会計を済ませたレジを後にするかごを抱えた青年を見送った。それに付き添う様に少女も後ろを付いてゆく。

若い二人のカップルは素っ気ない印象を受けつつも、寄り添っているその様は仲睦まじいようでもある。言葉を交わしていないようにも見えるが、きっ
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