それが君の”しあわせ”?
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っきのカップルが再び視界に移る場所へやってきた。女の子の方はさっきよりも青年と密着しているが、青年はこれといって反応してくれないのが不満なのかむくれている。素っ気ない態度を取るんだな、と少しだけ女の子に同情する。それと同時に、青年の態度に僅かながら苛立ちを覚えた。
スキンシップに慣れっこなのかもしれないが、女の子は明らかに退屈していた。それならそれで気の利いた話の一つでもしてあげればいいのに青年はどこ吹く風で黙りっぱなしだ。ゼリーだの豆腐だのをかごに放り込みながら、袖を引っ張る少女を引きずるような形で買い物を続けている。時折女の子がお菓子を指さして遠慮がちに何か言っているが、青年は無視を決め込んでいた。
(なんなのアイツ・・・一緒に来てるんだからもう一人のこと考えて動けないの?)
まるで自分の彼女の意見など最初から聞いていない、自分の決定に従っていればいいんだと言わんばかりの横柄な態度。昭和の亭主関白じゃあるまいし、あれでは女の子が可愛そうだろう。見ていて腹の底が煮える気分になってくる。
ああいう男は嫌いだ。主導権がいつでも男にあると思い込んで、大抵口を開けば上から目線の言葉を平気で吐く。本人は褒めているつもりかもしれないが、相手が自分の庇護対象でしかないと見なしているような態度は不愉快極まりなかった。少なくとも静枝は勝手に主導権を握られるもの一方的に守った気になられるのも好きではない。
そして女が自分の思い通りにならないと、だんだんああいう態度になっていくのだ。いつでも私の意志にきちんと耳を傾けてくれた夫とは違って。愛しているのは容姿だけで、人格など本当はどうでもいい。女のセクシュアルな部分だけで人を値踏みしている。
そして同時に、そんな男にいつまでも付き合っている女の子にも僅かな憤懣を抱く。そんな、人のことを本当の意味で愛せていない男になど付き合う必要も合わせる必要もない。駄目男に付き合っては時間がもったいないだろうに、どうしてあの女の子は無愛想な青年にずっと付き添っているのか。もしもそれでも好きだというならば、多少強引にでもイニシアチブを取るための行動を起こして牽引するべきである。
静枝には、二人の愛が歪に見えた。人のことを考えもしない強引な男と、そんな男から離れられずに本心を伝えきれずに引き摺られる少女。無論、2人の関係を遠見で見ているだけの静枝には二人の関係を完全に把握できている訳ではないし、解釈や事情に現実との違いがあるかもしれない。それでも、自分の夫に寄り添った自身の幸せと、見ず知らずのカップルの間にあるそれが重ならないことがどうしても苛立たしいのだ。
だが。
「あっ・・・・・・」
牛乳を買うために立ち止った時、何やらどの牛乳を買うか迷っている青年の後ろから、女の子が大胆に
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