それが君の”しあわせ”?
[4/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
アルバイトをしている。
(でもしんどいのはしんどいのよねー・・・肩もガチガチだし)
弟の志枝がまだ高校生であることが酷く羨ましいな、と彼女―――立花静枝は小さく嘆息した。既に彼女は成人を過ぎて23歳、高校を卒業して5年は経っている。やはり高卒で正規雇用を狙うのは少し厳しいものがあったらしい。
両親が事故で先立ち、遺産がいつまで持つかも分からない。そんな家庭状況に置かれた静枝は一刻も早く収入を得るために職に就こうとした。ところが現代日本というのは変な所で女性に厳しく、また高卒という事もあってか正規で雇ってくれるところはちっとも見つからない。かといって今から大学に入ろうにもお金がかかりすぎる。親戚連中は自分たち兄妹を厄介者のように扱い助けてくれる人もいない。そうして八方ふさがりになりつつあったその頃に、今の旦那と出会った。
彼との馴れ初めや何やらはさておいて、彼は私の境遇がお世辞にもいいとは言えない事を知ってなお、愛していると言ってくれた。歳の差5歳を無視して結婚してから早数年。現在家は弟、自分、夫の3人暮らしで何とかうまくやっている。弟の友達が簡単な農業をやっているらしく、その友達経由で野菜を貰ったり、その野菜で料理を作って友達に振る舞ったりと不思議な関係を築いている。何にせよひもじい思いはさせずに済んでいる訳だ。
それでも弟には迷惑をかけている、と思う。料理洗濯などの家事の半分程は志枝が自主的に受け持っている。理由は私がパートアルバイトで蓄積させる疲労を少しでも和らげるためだ。3人で当番制にしてはいるが、一番家に帰るのが速い弟の負担がどうしても増える。まだ高校生、色々遊びに言って楽しみたいこともあるだろうに、家計の所為で家事に時間を取らせているのは姉として申し訳なかった。
と、そんなスーパーの一角で茄子を目の前にうんうん唸る青年がいるのを発見した。青年の隣には年頃の女の子が一緒に野菜を覗き込んでいる。恐らくカップルなのだろう。一緒に買い物をしているという事は交際を通り過ぎて同棲しているのかもしれない。
少しだけ、羨ましかった。夫とは結婚に至るまでそれほど頻繁に遊べなかったし、買い物は夫と弟の3人でそれぞれ買うものを分担しているため一緒に買い物に行く暇も殆ど無い。こう忙しくては愛を確かめ合う暇もない。
(あの子たちみたいに一緒に買い物できるだけの時間があればな・・・)
両親が死んでいなければ自分もああやって、と考えて首を横に振る。無い物ねだりはしてもしょうがないと言うのは分かっているのだ。だから自分は将来のためにここで頑張らなければいけない。いつの間にか野菜コーナーを通り過ぎて見えなくなってしまった若いカップルの事を気にしつつも、静枝は改めて業務に集中することにした。あと30分
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ