それが君の”しあわせ”?
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うどんの汁というのは、東の地方になればなるほど味が濃く、逆に西になればなるほど味が薄いと聞き及んでいる。大雑把に分ければ関西が薄めで関東が濃いめ。地域の温度やだしを取るに適した水質など色々な地域的状況が重なってそのように別れたらしい。
どちらが美味しいという優劣は付け難い。何故なら普通は自分の慣れ親しんだ味が美味しいと感じるだろうからだ。関東の人間は関西のうどんを見て「なんだこの薄いつゆは」と顔を顰め、関西の人間は「何このどす黒いダシ」と恐怖する。最終的な判断は食べた人間の味覚に委ねられることになるため、この決着がつくことはないだろう。
だが、同じ位の濃さの汁を使っていても、店によって更に細かく味が変わってくる。その中で美味しいと不味いが分別され、より多くの人間が美味しいと感じるうどんが周囲に愛されるのだ。例えばネギの鮮度。例えば麺のこしの有無。例えばトッピングの味。そして先ほどから話していた汁。それらを総合的に判断した結果―――
「値段の妙に高い割に美味しくない・・・」
そのうどん屋「どんの助」の肉うどんは美味しくないな、と直中間宵は判断した。ちなみに彼女の住んでいるのは関西圏。彼女自身もそのどこかの出身であり、彼女が食べたうどんも関西のだしうどんである。
「700円もするのにこれかぁ・・・失敗だったなー」
「そう?私的には普通だと思うんだけど・・・」
そんな彼女に消極的反対意見を出したもう一人の少女に間宵は「どこがよ!」と叫んでテーブルを叩く。その剣幕はかなりのもので、テーブルを叩いた衝撃で御冷の中身が零れかけるほどだ。うどん一杯にどれだけムキになっているのかは知らないが、怒りすぎなんじゃないか、と彼女―――船頭悟子は少しばかりむっとした顔になった。
確かにこの店に行ってみようと言い出したのは悟子だ。そういう意味では悟子に非があると言えなくもない。だが、だからと言ってうどんの味が気に入らない事を自分にぶつけられるのは余りに不条理だろう。しかし、同時に悟子は間宵が味にうるさい性格であるのも知っていたため、心のどこかで納得もしていた。
「まったく・・・これなら学食のうどんの方がまだ・・・ふがっ!?」
「ちょちょ、大声出し過ぎ!店の人に聞こえるって・・・!」
慌てて彼女の口を塞ぐ。客の数が少ないからあわや、とも思ったが、幸い店員には聞かれなかったらしい。間宵も自分の失態に気付いたのか素直にだまり、やがて訊かれてない事にほっとして溜息を吐く。
もう、と悟子が恨めし気な非難の目線を間宵に送る。悟子は間宵のそういう無遠慮な所に辟易していた。普段からこうであるわけではないが、こと食べ物関連になると彼女の口は遠慮を知らない。みんなが「まぁまぁだ」と言った食べ物
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