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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十五話 余波(その1)
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。同盟市民百三十億の視線が我々を見て居る事を銘記すべきだ」
彼方此方から呻き声が起きた。しかし反対する声は上がらなかった……。

会議が終わったのはそれから一時間程が過ぎてからの事だった。席を立ち帰ろうとするとシトレが声をかけてきた。
「レベロ」
「なんだ、戦争屋」
敢えてシトレを貶す様な言葉を使った。シトレが苦笑している。

「上にヘリを待たせてある、乗っていかないか。国防委員長も一緒だが……」
「貴様らと一緒にか」
顔を顰めて見せた、シトレの苦笑が益々大きくなった。
「今外に出たらマスコミに滅茶苦茶にされるぞ。ピラニアの群れに生肉を投げ込むようなもんだ。悪い事は言わん、乗って行け」

なるほど、確かにそうだ。良い口実だな。ではこちらも一芝居打つか。
「もう一人良いか?」
「構わんよ」
「ホアン、君もどうだ。戦争屋のヘリに乗るのは癪だがピラニアの群れに襲われるよりはましだろう」
「やれやれ、究極の選択だな。そうさせてもらおうか」

ヘリに乗ると早速話が始まった。ヘリの音がうるさい、顔を寄せ合い大きな声で話す事になった。
「予想外な展開だな、シトレ」
「まったくだよ、レベロ。こんな事になるとは思わなかった」
「さっきは不始末を仕出かした息子を庇う父親みたいだったぞ」
私の言葉に皆が笑い出した。

「不始末じゃないさ。出来が良すぎて理解されない息子を弁護しただけだ」
その答えにまた笑い声が上がる。一頻り笑った後、ホアンが問いかけた。
「これからどうなる」
会議では軍が責任を負う事になった。サンフォードもボローンも軍に責任を押し付けたといえる。シトレとトリューニヒトはこの事態をどう見ているか。

「さて、どうなるかな。だが悪くないと私は考えている」
「悪くないか」
「ああ、悪くないと思うよ、ホアン」
トリューニヒトはそういうと私達を見た。

「帝国と同盟に共通の敵が出来た。そして帝国のトップと顔をつなぐ事が出来たんだ。悪くないだろう」
「おそらくヴァレンシュタインの狙いはそこだと思う。上手くいけば和平交渉のとっかかりになる」

トリューニヒト、シトレの顔には笑みが有った。ホアンに視線を向けると彼は私に頷いて見せた。やはり皆考える事は同じか……。
「サンフォード議長もボローンも我々に責任を押し付けたつもりかもしれない。
だがこちらもそれは望むところだ。むしろここで出なければヴァレンシュタインに笑われるだろう。せっかくお膳立てしてやったのに何をしているのか、役に立たん奴らだと」

トリューニヒトの言葉に皆が笑い出した。トリューニヒトも笑っている。全くあの小僧はとんでもない奴だ。フェザーンに居ながら我々を操っている。
「それで、これからどうする」
私の問いかけにトリューニヒトが笑顔
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