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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十五話 余波(その1)
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ーニヒト達四人の顔は引き攣っていた事が印象に残っている。おそらくは自分も同様だっただろう。

「警察の仕事になるな、国内保安法の適用か……、初めてのケースだろう」
ラウドがボローンに顔を向けた。皆も自然とそれに倣う。法秩序委員長ライアン・ボローンの顔は引き攣っていた。
「国内保安法だと? 馬鹿な」
吐き捨てる様なボローンの口調だった。気持は分かる、誰だって国内保安法の適用など考えたくは無い……。

国内保安法は暴力主義的破壊活動を行った団体に対して規制措置を定め、その活動に関する刑罰を規定した法律だ。同盟成立後、比較的早い時点で成立した法律だが評判が悪い。言論、表現の自由が制限されるのではないか、政治団体の活動を制限する物ではないかと市民だけではなく政治家達からも評判が悪かった。その所為だろう、これまで国内保安法が適用された事は無い。

「警察が動かないというなら軍が動く事になるがそれで良いか、ボローン法秩序委員長」
「馬鹿な、何を考えている」
トリューニヒトの言葉にボローンが驚いたように声を出した。ボローンだけじゃない、他のメンバーも驚いている。

トリューニヒトが周囲を睨むように見ながら口を開く。
「地球を軽視すべきではないと思う。彼らは帝国と同盟を共倒れさせようとしている。フェザーンの経済力と地球教という宗教で人類を支配しようとしているんだ。これは戦争だ、警察が動かないというなら軍が動く」

トリューニヒトの横でシトレが頷いた。既にこの二人は話し合っているのだろう。ボローンがトリューニヒトへの反発から、或いは国内保安法を適用することへの不安から動かない可能性を考慮したに違いない。皆はどう判断して良いかわからず困惑している。

「その方が良いと思う」
ホアンだった。皆が驚く中ホアンはゆっくりとした口調で話しだした。
「相手は宗教団体だ、国内保安法を持ち出せば反対する口実を与える様なものだ。当然地球教側もそれを言うに違いない、不当な弾圧だとね。むしろ敵と断定して軍を動かした方がはっきりして良いと思う」

「しかし、はっきり敵と決まったわけでは」
反対するマクワイヤーにホアンがうんざりした様な表情を見せた。
「天然資源委員長、もうそんな事を言っている場合じゃない」
「……」

「我々は行動するしかないんだ。確かにあの通信が出鱈目なら政権は吹っ飛ぶだろう。しかし躊躇して判断を先送りにすれば同盟市民は政府の統治能力に深刻な不安を抱くに違いない、自分達を守る意思が有るのかとね、政府は二進も三進も行かなくなるぞ、結局は総辞職だ。我々はこの問題を最優先で解決しなければならないんだ」

なるほど、確かにその通りだ。我々には行動するしかない。
「私も人的資源委員長に賛成する。我々は行動するべきだ、躊躇は許されない
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