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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十五話 余波(その1)
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うです、ルビンスキーを返すなど論外だと思います。むしろこれからどうするかを話し合うべきではありませんか。事は起きてしまったのです」

青筋を立てているサンフォード議長にホアンが冷静に指摘した。その通りだ、問題はこれからだ。どれ、私も手助けするか。シトレが父親なら私の役どころは近所の心優しい小父さんかな。
「先ずは地球教だな、帝国との取り決めでは至急取り締まる、だったな。国防委員長」
私の言葉にトリューニヒトが頷いた。

「待て、帝国との取り決め? 帝国に協力すると言うのかね」
「そういう約束のはずだ、マクワイヤー天然資源委員長」
「馬鹿な、帝国に協力など」
何人かがマクワイヤーに同意するかのように頷いた。

「では反故にすると言うのかね。どれだけの人間があの通信を聞いていたと思うんだ? 第一、これは帝国だけの問題じゃない、同盟の問題でもある。同盟にも地球教は浸透しているんだ」
私の後にホアンが続いた。

「財政委員長の言う通りだ。だからヴァレンシュタイン中将は両国の首脳を引き合わせたのだろう。レムシャイド伯が協力したのもこれは帝国、同盟共通の問題だと認識したからだ」
皆が顔を見合わせている。周りを窺うような表情だ。ヴァレンシュタイン、ホアンに感謝しろ、ここにも優しい小父さんが居た。

「取り決めと言うがトリューニヒト国防委員長にもシトレ元帥にも帝国と取り決めを結ぶ権限などないはずだ」
自信無さげな声だな、トレル。もう少しましな意見を出せ。経済開発委員長か……、長い戦争で大規模開発プロジェクトなど予算不足、人員不足で行われていない、開店休業の状態だ。おかげでこんな馬鹿でも委員長が務まる。これも戦争の弊害だ。

「そんな事を言っている場合かね。同盟と帝国が共倒れになるのを笑いながら見ている連中がいるんだ。それを無視して戦争を続けるのかね、馬鹿馬鹿しい」
ホアンが激しく机を叩いた。トレルがバツが悪そうに俯く。

「しかし、あれは本当なのか?」
周囲を窺いながら問いかけたのは地域社会開発委員長のダスティ・ラウドだ。彼の言葉に皆が困惑を浮かべた。ターレルやボローンも笑みを消している。自然と皆の視線がトリューニヒト、シトレの二人に向かった。

「本当、と思わざるを得んな。あの通信を見て居た人間なら分かるだろうが、レムシャイド伯の部下達がルビンスキーの私邸を捜索した。そして地球との通信に使用していたと思われる通信室を発見したのだからな」

あの通信の後半にさしかかる頃だったろうか、ルビンスキーの私邸に向かった帝国兵からレムシャイド伯爵に通信室を見つけたと報告が入った。起動すると地球教の総大主教と思われる人間とコンタクト出来たらしい。思念だけで映像が無いためそれ以上は確認できなかった。しかし、その報告を聞いた時のトリュ
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