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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十五話 余波(その1)
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中将はフェザーンに対してその真の姿は地球なのではないかと疑いを持っていたようです。ただ確証が無かった。そのため我々にはそれを話しませんでした」
「どうしてだね」
「証拠も無しに言えるような事ではないと判断したのしょう。或いは言っても信用してもらえないと思ったか……。我々に言ったのはフェザーンにはどうも不審な点がある。或いはそれを確認するために少し無茶をするかもしれないという事でした」
まるで不始末をしでかした息子を庇っている父親のような口調だな、シトレ。あのバカ息子に少しは親の苦労を教えてやりたい気分だ。
「少し無茶? あれのどこが少し無茶だね。アドリアン・ルビンスキー、レムシャイド伯を拉致し、カーチェイスでは十人以上の警官を病院送りにした。死人が出なかったのは奇跡だそうだ。おまけに最後はフェザーンを攻撃しろだと? 全銀河の人間があれを聞いたのだぞ!」
興奮するなよ、シャルル・バラース。お前はサンフォード議長の腰巾着だから点数を稼ぎたいんだろうが見え見えで興醒めする。
「それは正確ではないな。レムシャイド伯は自分の意志でヴァレンシュタイン中将に同行している。それにフェザーンを攻撃しろと言ったのはあくまで自己防衛のためだ。フェザーンが彼を攻撃しなければこちらもフェザーンを攻撃しない」
トリューニヒトが片眉を上げて間違いを訂正した。逆効果だろうな、バラースの顔が朱に染まった、大当たりだ。
「だからなんだと言うんだね! 大したことではないとでも言うのかね!」
火に油だ、トリューニヒトは無表情にバラースを見ている。内心では呆れているか、舌でも出しているだろう。
「フェザーンからは強い抗議が来ている。早急にルビンスキーをフェザーンに戻したまえ!」
強い口調だ、明らかに議長は興奮している。皆がサンフォードの言葉に困惑を浮かべた。当然だろう、この状況でルビンスキーを返す? 状況が分かっているのか、この男。
「それは得策とは言えません。今ルビンスキーをフェザーンに返せば地球について何も分からなくなります。彼は生証人ですよ」
「あんなでたらめを真に受けるのかね、君は」
トリューニヒトの言葉にサンフォードがむきになって言い返した。らしくないな。
「国防委員長の言う通りです。同盟市民はあの通信でフェザーン、地球に対し強い不信と疑問を持ったはずです。ルビンスキーを返すという事は市民の不安に答えないと政府が宣言したも同然です。滅茶苦茶になりますな」
私の言葉にサンフォードが顔を顰めた。シャルル・バラースがサンフォードの顔色を窺うように見ている。しようの無い奴、この期に及んでなおも御機嫌取りか。
「もう少し建設的な話をしませんか」
ホアンが何処かのんびりした口調で間を取った。いいぞ、ホアン。
「建設的だと!」
「そ
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