囚われの姫は何想う
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いる血族の中でも自分だけは味方だと信じてくれて、特別扱いされたのが嬉しかったから、言い返す事はしない。
――こんなに愛らしい子を自分は殺せるんでしょうか……
利九の胸が痛んでいる事に小蓮は気付かない。絶望の淵に立っている事を小蓮は見抜けない。
どちらも大切になってしまった孫呉の姫は……裏に張り巡らされている糸の鋭さを知らず。
無理やり感情を抑え付けた利九は、ふるふると首を振ってから厳しい声を続けた。
「……話していたので休憩も十分でしょう。書簡の確認を続けましょう」
「えー、もうちょっとだけお話しようよー」
「夕食のおかずを減らされてもいいな――――」
「さ、さっさと終わらせちゃうね!」
まだ、まだ待って欲しい。悲鳴を上げる心をも微笑みに仕舞い込む。
利九は今の穏やかな時間を少しでも続けられるようにと、叶わぬ願いを口には出さず呟いて、小蓮の隣で自分の仕事に取りかかった。
†
その夜、小蓮は眠れず、ごろごろと寝台の上で寝返りを繰り返すばかり。
姉のしている事が自分の為だと分かってはいた。妹を助けようと全てを使って動いてくれているのだと嬉しくもあった。
ただ……その結末が友達の命とはなんと悍ましい事か。
民からの評判が地に落ち始めている袁術、大徳と呼ばれて民から希望を向けられている孫策。民が望むのはどちらであるのか明白ではある。
裏切りという汚名を被って尚、余りある名声から……最後に望まれるのは何か。
民は正義を望む。それも圧倒的で強大にして確かなモノを。悪辣な旧支配者の頸というのは大きな効果があるのだ。例えそれが少女のモノであっても。
権力者の責任は重い。どんな裏や理由があろうとも、民からすれば知った事では無く、望む通りにいかなければ糾弾して当然のモノ。見た目幼かろうと、歩くも困難な年寄りであろうと、取らされる責は等しく、成り変わる代替者が与える罰を誤れば明日からの信に不信を混ぜる事となるのだ。
家族との手紙は一方通行。自分から美羽との仲の良さを伝える事が出来なかった。救出の算段を立てられては困るゆえ、情報の全てをぼかされている。それも利九から教えられた袁家のやり口。七乃とは別に、小蓮を監視する間者が幾人も紛れ込んでいるという。
「……私はどうしたらいいんだろ」
自分が死ねば……姉のしてきた事も想いも無駄になり、友も恩人も悲しむ。
生きていても……お互いが憎み合っていがみ合う。
彼女にはどうしたらいいか分からなかった。
それに多くの人の命が支払われているのだ。自身が必要ないとは思わない。否、思えない。若くとも王才持つが故に。
「普通の家だったら……こんな辛い思いしなくていいのかな」
彼女は自身の血を呪った。最近では毎
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