涙の主と嘘つきな従者
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。
ライアーの女主は、仲間は、同居人は―――――片想いの相手は、死んでしまう。
(・・・そんなの)
ぐっ、と。
抜けたはずの力を込める。
歯を食いしばって、残った力を込めて、集めて、解き放つ。
「オオオオオオ・・・」
「んあ?」
勝利を確信していたヒジリは、ライアーに目を向けた。
ミシミシ・・・と嫌な音が響いていく。
ヒジリの目が、信じられないモノを映すかのように見開かれた。
「お・・・オレの死の拘束が・・・」
「オオォォォォオオオオオ!」
ライアーの気合いの声。
それに合わせるように切れていく、呪いの古代文字。
文字が揃えば文になり、文になった時呪いを意味出来る。バラバラになってしまえば、そこにあるのは呪いじゃない。
「引き千切られてるだと!?」
「オオオアアアアアアアアアアアアッ!」
ブチィッ!と。
漆黒の拘束が、音を立てて弾け飛んだ。
タン、と軽く床に降り立ったライアーは、愛槍を拾って握りしめる。
「・・・魔滅連斬」
感情を抑えた声で呟き、フィレーシアンを突き立てる。
すると、ティアの幻とそれを囲む鎖が―――――消えた。
「なっ・・・!」
「もっと早くこの手を思いついていれば良かったんだがな」
ヒジリが目を見開き、ライアーは淡々と告げる。
ハッとして振り返ったヒジリは、思わず後ずさった。
そこにいたのは―――――――恐怖。
鬼でも悪魔でも魔王でも足りないような、絶対的な恐怖の対象。
「貴様は俺を怒らせた。それ相応の報いを受けてもらわねば気が済まない」
淡い水色の光に包まれ、フィレーシアンが形状を変える。
槍から、薙刀へと。
長い黒い柄を握りしめ、銀色の刃を煌めかせ、ライアーは歩く。
「テメッ・・・どうやって死の拘束を引き千切りやがった!あれはテメェが死なない限り拘束されっぱなしのハズだ!」
ヒジリが喚く。
相手が死ぬか、術者であるヒジリが解除しない限り解けないのが死の拘束だ。
それを自力で引き千切った者など当然初めてである。
「知るか、そんな事」
ライアーにとって、1番扱いやすい武器は槍だ。
だからフィレーシアンの形状は常に槍で、剣や斧に変える事は滅多にない。
だが、“扱いやすい”事と“強い”事は違う。
「俺はただ、従者としての仕事をする為に障害を消したまで」
ライアーが扱う近距離戦闘用武器で1番強い武器は、薙刀だ。
全体の長さが長くて持ち歩きにくい事や槍の方が扱いなれている事から、変換する事は滅多にない。
が、威力を重視する際には薙刀を用いている。
「主を守る・・・それが俺の仕事であり、生きる意味であり、存在理由」
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