涙の主と嘘つきな従者
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それに対し、ティアは不思議そうに首を傾げた。
「い、いいのか?」
「だって、消される覚悟もあるんでしょ?それ以外の断る理由はないし」
何か問題でも?というように首を傾げるティア。
その様子に思わず脱力しかけながら、ライアーは何とか立ち上がった。
「それじゃあ・・・よろしく。えっと・・・女主?」
少し考え、呟く。
主だとクロスと被ってややこしい為、女主と呼んでみる。
すると、ティアは不機嫌そうに眉を顰めた。
「何よそれ、ティアでいいわ」
「ダメだっ!主は主と呼ばねば!」
「その主が名前で呼べって言ってるんだけど?」
「うぐっ・・・」
ずい、と1歩近づく。
思わず1歩下がる。
青い瞳が真っ直ぐにこちらを見ていて、頬に熱が集中した。
「う・・・解った。ティア、でいいんだな?」
「ええ、それ以外で呼んだら契約破棄だから」
「そこまでするのか!?」
「当たり前でしょっ!私の名前はティア、それ以外の名はないしね」
そう言ってギルドに帰るべく歩き出したティアを慌てて追いかける。
ギルドに入って初日の為、まだマグノリアの事をよく知らない。1人でギルドまで戻れる訳がなかった。いくらギルドの建物が大きいとはいえ、だ。
「俺の正式な主は弟君だが、ティアの事も生涯守り抜くと誓おう」
「突然どうしたの?・・・ま、私はそう簡単に守られやしないわよ」
「か・・・形だけでも、だ!それが俺達従者の生涯の仕事なんだからな」
「ふぅん、それじゃあ・・・」
ピタリ、と。
突然止まったティアの足に合わせるように、ライアーも足を止める。
どうした?と聞こうとして、それを遮るかのようにティアがくるりと振り返った。
「私が本当に危険な時は、守られてあげるわ」
そう言って、微笑む。
柔らかいその微笑みは、夕日を浴びて輝いていた。
(うー・・・そういう、事かっ)
それを真正面で見て。
鼓動が響いて、頬が熱くなって、直視出来なくなって。
――――――ライアーは、己の感情に気づく事となった。
「!」
目を開く。
完全な黒だった視界に、色と光が現れる。
死の拘束は緩む事なく締め付けてくるが、今のライアーは、不思議と苦しさを感じなかった。
―私が本当に危険な時は、守られてあげるわ―
彼女の言葉。
本当に危険な時―――――それは、今だろう。
ライアーはカトレーン一族をそれなりに知っている。どんな一族かも、当主であるシャロンがどんな女かも。
それを踏まえて断言出来る。
(今のティアは、危険だ)
それも、命の危機だ。
ティアを救えなかったら、確実にティアは死ぬ
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