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久遠の神話
第百四話 最後の戦いの前にその八

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「伴侶を持たず」
「そしてですね」
「処女神です」
 そう定められているのだ、この三柱の女神達は。このことはギリシア神話においてもはっきりと書かれている。
「そうなっています」
「だからでしょうか」
「セレネー姉様もですね」
「はい、お姉様もまた」 
「その恋は」
「結ばれない運命かも知れません」
 処女神であるが故にというのだ。
「最初から」
「それではセレネー女神も」
「あの方も運命のことはご存知の筈です」
 月の女神であるが故にというのだ。
「月の女神の運命のそれを」
「ではまさか」
「人は死ぬものです」
 また悲しい顔になって言った聡美だった。
「神は死にません、遊ぶのならともかく」
「共に生きることはですね」
「出来ないのです」
 絶対に、というのだ。
「それは」
「だからあの方は愛しい方を神にしたいのですね」
「そうです、力を集めて」
「僕達を戦わせて」
 ここで上城もまた言ってきた。
「そうしてですね」
「そうです、ですが運命は」
「それはですね」
「果たして。それから逃れられるのか」
 神であろうとも、というのだ。
「運命は恐ろしいものです」
「あの、ですが」
「ですが?」
「運命は変えられますよね」
 上城は聡美にこう言った、ここでは。
「そうですよね」
「はい、それは出来ます」
「ではあの方も」
 セレネーもだというのだ。
「若しかしたら」
「確かに運命は変えられます」
 聡美もこのことは否定しない、運命もまたその行動で変えることが出来るのだ。このことは紛れもない事実である。
 しかしだ、聡美は上城にこうも言った。
「ですが、それはあくまで己でするものです」
「自分自身で、ですか」
「そうです、自分で切り開くものであり」
「僕達をですね」
「貴方達を長きに渡って。気が遠くなるまで転生させて戦わせて変えるものかというと」
「それはですか」
「自分で開くものですから」
 それ故に、というのだ。
「お姉様は間違っておられます」
「自分で、ですか」
「そうです、そうすべきだったのでしょう」
 こう語るのだった。
「やはり」
「そうですか」
「人も神も」
 どちらもだというのだ、この場合は。
「運命は自分で変えるものです」
「僕もですね」
「そうです、貴方達も」
 剣士達もだというのだ。
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