例えばこんな願いを抱くのはおかしいかな
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いるけど、きっと私のせいで死んだ人も沢山いる。家族にだって・・・仇しか返せてない。いっくんの気持ちも箒ちゃんの気持ちも、ちーちゃんのことも私は・・・」
「束・・・」
親とはぐれ、雨に濡れる子兎。今の束はまさしくそんな存在だった。震える友人の痛々しい姿を見ていられなくなり、彼女の手を取り強く握る。手汗で濡れ、震えた掌。今までに一度も見たことのない親友の姿。人間の心など手に入れなければ、これほどに怖がらなくても良かったろうに。
余りにも皮肉ではないか。心を手に入れたかった束がそれを得たというのに、その中で一番強く感じるのが喜びではなくて恐怖と自責だなどと。束は束なりに、まともな人間になりたかったのだ。まともでない自分が迷惑を撒き散らしていることを、理屈で気付いてたんだ。だから求めたのに―――
「そんな顔しないでちーちゃん。私、怖いけど・・・大丈夫」
「そんな姿で言っても信じられるか!そんなお前は見たくなかった。そんなに小さ震えるくらいなら、いつも通りの笑ったお前の顔が見たかった・・・!!」
考えたことがある。束がもしももう少し良識を弁えた人間だったのなら、これほど苦労はせずに済んだろうにと。だが間違っていた。束は良識が無いからこそあの束でいられたのだ。後から心など付け足せばこうなることくらい、少し考えれば分かったのに。
「でも、ちょっとだけ分かるようになったの。なんでちーちゃんは私の発明に笑ったり怒ったりするのか。何で箒ちゃんがISを受け取った時、迷いがあったのか。私、分かるよ・・・何で分からないんだって怒られたけど、今は・・・分かるの。それが、少しだけ嬉しくて―――」
だから、きっと今の私は―――心が分かった私は、何も理解できていなかった私よりも幸せ。
その後、千冬は我慢できずに部屋に入ってきた箒と一緒に、震える束の手を握り続けた。
人生で初めて見ることになった束の涙を―――まるで今までの苦悩を全て流すかのような涙をぬぐってやりながら。
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