例えばこんな願いを抱くのはおかしいかな
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その疑惑や疑問の一部が、このドアの向こう側で少しずつ融解していく。
だから、それだけに箒にはショックだった。
「普通の女の子になりたかった・・・?」
箒も、姉が失踪してからは幾度となくそれを願っていた。篠ノ之の名前を捨てて、普通の女の子として普通に一夏と一緒に過ごしたかった。でも―――姉はそんな自分よりも、はるか昔からそんなことを考えていたんだ。
「私は、そんなこと知らなかった・・・・・・姉妹なのに・・・」
姉の事を憎んでいた。何故家族を、私を捨てて勝手に逃げ出したんだと。貴方のせいで私は不幸になったんだと。だが、箒の本当の願いは結局のところ一夏に会えないとかそういうレベルのもので、学園でそれは叶ってしまっていた。
だが束はそうでない。自分よりもずっと前から苦しんでいて、おそらくはつい数日前までの全ての人生で普通に行動できない自分に苦しんでいた。他人に理解を求める事さえ「思いつかず」に。
「何も、知らなかった・・・」
勝手に自分だけが被害者で姉だけが悪だと、心のどこかで思っていた。そうだと分かっていれば、何かしてやれたかもしれないのに。姉の苦悩を、初めて理解した瞬間だった。
= =
そしてそれを実行した、そのすぐ後に彼が現れたのだ。
ISコアは、その全てに開発者たる束の因子を組み込んでいた。それはとても感覚的なもので、尚且つひな形として受け入れられるように束の遺伝子と共振するような、特別な構造に作り上げてあった。束だけが持つ固有の脳波―――どうやらそれは極低確率で出生する、不確定的な、外部にまで伝達できるほどの強い波動、一種のテレパスとでも言うべき波動と強く惹かれあい、意識を共有し合う。ISコアは人間と結びつくことで初めてその力を発動でき、彼女の言葉だけを完全に正しく理解できるよう作られていた。
このテレパス的波動は、束が試しに計算した所「特定の因子となりうる遺伝情報を持った男女の間に約250億分の1の確立で産まれる」という結果が導き出されるほどに特殊で希少で稀有で、束は当初これこそが心がいびつになった原因ではないかとさえ考えた。
その波動を持った人間が―――特定の因子となりうる遺伝情報を持った男女の間に約250億分の1の確率で産まれる男が、それこそが、真田ゴエモンだった。篠ノ之の家系と遠い繋がりがあるから可能性としてはあったろうが、確率は限りなくゼロに近かった。だが、産まれていた。
そしてそれに出会い、束と同じ波動を感じたことで”人の心”と共振を起こして抑制プログラムを弾いたISコアが現れた。それこそが、オウカだった。
束と違い、歪みながらも確りとした人間の心を持っていたゴエモン。彼のISコアに対する干渉は、当初の予定を超えてISコア一つ一つの自意識の確立を加速させ
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