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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十六話 調印式
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の賠償請求をすれば独立そのものが否定されます」
ゲルラッハがわしの顔を見た。

「なるほど、では具体的にはどういう事になるのかな」
わしが問い掛けるとヴァレンシュタインがにこやかな笑みを浮かべた。
「同盟はフェザーンの独立のために努力してきました。フェザーンがその努力を踏み躙る様な行為をするのであれば当然ですが同盟はフェザーンに対して報復する事になります」
「……」

「同盟は帝国に対してフェザーンへの共同出兵を提案します」
ヴァレンシュタインの答えにゲルラッハ、シュタインホフと顔を見合わせた。ここまでは想定内だ。
「出兵の後は如何する、占領するのか? 何かと面倒だと思うが……」
軍からは共同占領は新たな紛争の種になりかねないと警告が出ている。帝国対フェザーン、帝国対同盟、火種は有るのだ。

「占領はしません。フェザーン本土を直接叩くだけです。フェザーンが自らの口で賠償請求を放棄すると宣言しない限り何度でも攻撃を続けます」
「一般人にも被害が及ぶぞ、卿は分かっているのか?」
シュタインホフが顔を顰めながら問う、いや誹謗するとヴァレンシュタインは“已むを得ません”と言った。

「フェザーンは民主共和政を選ぶようです。つまり賠償請求はフェザーン市民の意思という事でしょう。ならばフェザーン市民に条約を破るという事がどういう事態を引き起こすか、理解させるべきだと思います」
「……」
トリューニヒト議長もホアン委員長も表情に変化は無い、同意見という事か。

「フェザーンの独立は帝国と同盟の支持が有って成り立つもの、それを失えば独立も失う、そういう事だな」
わしが問い掛けるとヴァレンシュタインが頷いた。なるほど、帝国と同盟が手を結んでいる限りフェザーンは何も出来ぬか。これまでのように両国の中間で漁夫の利を得るような事は許さぬという事だな。フェザーンも勝手が違うだろう。

ゲルラッハ、シュタインホフに視線を向けると二人とも軽く頷いた。悪い話ではない、帝国にとっては十分に利の有る話だ。
「良く分かった。疑念は晴れた。後はフェザーン回廊の出口にそれぞれ要塞を建設する事でフェザーン回廊の中立化を図る、そういう事だな」
「そうです、両国ともほぼ同じサイズの要塞を設置する。直径四十キロ、帝国に有るガイエスブルク要塞を参考にしたいと思います」

ヴァレンシュタインが答えると皆が頷いた。先ず一つ解決か。
「では次に同盟が所持している帝国企業の株について話し合いたい」
ゲルラッハが次の議題を提示した。溜息が出そうになったが慌てて堪えた。





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