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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百二十六話 調印式
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中で終わった事が影響している。だが何より大きいのは調印式が同盟側で好意的に受け取られている事だ。

トリューニヒト議長の記者会見が上手くいったらしい。議長はアマーリエに対する印象を好意的に語った。その事で同盟市民からのアマーリエに対する好感度は非常に高い。悪くないな、帝国内部でも好意的に見られている。アマーリエが自らイゼルローンに足を運んだ事は捕虜を戻すために皇帝が尽力していると平民達、軍人達から受け取られたようだ。アマーリエに調印を頼んだのは賭けだったが成功したと言って良いだろう。調印式は帝国、同盟両国で好意的に受け取られている。

調印式は上々の首尾だったが帝国と同盟の間にはまだまだ解決しなければならない問題が有る。フェザーンの独立問題、帝国の企業の株、帝国が発行した国債、和平条約の概要の確認と共同宣言の文言……、問題は山積みだ。今はフェザーンの独立問題を討議している。これには貴族連合が起こした暴行に対する損害賠償請求も絡んでいる。細心の注意が必要だ。

「フェザーンは独立させる、そういう事で宜しいのですな?」
「うむ、構わない。自治領と言っても形だけのものだ。独立させた方が紛れが無い、後々扱い易いだろうというそちらの意見に同意する」
わしがトリューニヒト議長に答えると席の後ろから息を吐く音が幾つか聞こえた。不満が有るらしい、だがわしが後ろを振り返ると顔を強張らせて姿勢を正した。

貴族連合軍が馬鹿をやってくれた。フェザーン人に対して乱暴狼藉だけに留まらずボルテックまで殺した。フェザーン人達は帝国に対して損害賠償をと騒いでいる。ペイワードが焚き付けているという可能性も有る。帝国に対して少しでも優位に立とうというのだろう。そんな油断のならない反帝国感情に溢れた二十億の住人など誰が欲しいか! 少し考えろ!

「それで、例の件は間違いないのかな?」
わしが問い掛けるとトリューニヒト議長が大きく頷いた。
「大丈夫です、我々がフェザーンに対してフェザーン企業の株を返却する。そしてフェザーンは帝国に対して貴族連合軍が行った蛮行に対する賠償の請求を放棄する。既にペイワード氏は同意しております」

「独立後、フェザーンが約束を破るという事は? ペイワードはともかく他のフェザーン人が納得しないという事も有ると思うが……」
ゲルラッハ財務尚書が質問するとトリューニヒト議長がヴァレンシュタインに視線を向けた。皆の視線がヴァレンシュタインに向かった。

「フェザーンの独立は同盟と帝国がそれを認めるという形を取ります。つまり条約を結ぶ事でフェザーンの独立を認める。条約には同盟がフェザーンに対して企業の株を返却する事、それに対してフェザーンが帝国への賠償請求を放棄する事が、帝国がフェザーンの独立を認める前提である事を明記する。フェザーンが帝国へ
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