SAO編
第一章 冒険者生活
Ex2.裏方の仕事人
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一歩だけ踏み込む。
相手がその一歩を受け入れれば次の一歩を踏み出すが、そうでなければそこで終わり。
此方だけが信頼して飛び込んでも、相手が受け止めてくれなければ痛い思いをするのだから、慎重に慎重を重ねる。痛い思いはしたくないから。
でも今回は時間が無い。
私の信頼全部を委ねていい人物か、ゆっくりと石橋を叩いている時間は無い。
一足飛びに「他人の為に命を懸けてくれ」と頼むしかない。
普段のキリュウならば受け入れてくれる可能性は高い。それは今までの付き合いからでも解る。問題は、命の懸かった極限状態ではどういう選択をするのかだ。
正直な話、そこまでの信頼関係はまだ築けていないと思う。
――抜き打ちテストだ、キリュウ。見事、私にとっての正解を導き出してくれ……。
私はメッセージの送信ボタンを押した。
◆
「――ハッ、ハッ、ハッ……!」
暗闇に染まったフィールドを、俺は闇雲に走っていた。
思考もなく、目的地も決めず、ただ離れなければいけないという意識のみで身体は動いていた。
「ゼッ、ハー、ゼッ、ハー……っ」
どのくらい時間が経ったのか、走っていた先に偶然あった村の《圏内》に入ったとき、俺はようやく足を止めた。
両のひざに手をついて、息を整える。
「すぅー……はぁー……」
呼吸が落ち着くのと同時に、頭の方も落ち着いてきた。
落ち着いたことで、思い出したくないこともどんどん脳裏に甦って来る。
――クソッ……クソッ……クソォォ……!
失敗した。
あれだけ大言壮語を吐いたってのに、ビーターを殺せなかった。
協力してくれた奴らにゃ報酬を払わなきゃならないし、殺せなかったことで色々と言われるだろう。
ノリの軽い即席の仲間やつらのことだ。最悪、『ビーターを殺すと息巻いて、結局は殺せなかった男』というのを尾ひれ付まくって周りに言い触らしかねない。
「……ぅ」
いや、絶対にするだろう。
これじゃ本当の仲間あいつらのもとへさえ帰れねぇ……。
結局、俺がしたことは、俺の全てを失くしただけだった。
あの野郎――俺の目論みを邪魔しやがった蒼い髪と眼のガキ。
ルネリーちゃんといた野郎だ。名前は忘れた。
俺のルネリーちゃんとパーティーを組んでいるどころか、更に二人も女の子を囲んでいるイケスカない奴。
最初の印象はそれだけだった。
ルネリーちゃん絡みでまた会うかもな、とは思っていたが、まさかあの場面で出しゃばってくるとは全くの想定外だ。
――アイツ……今回のこと、ルネリーちゃんに言うかな……?
言うよな。俺がアイツだったら言うもん、ゼッタイ。
ああ、仲間も尊厳もを失い、最後
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