SAO編
第一章 冒険者生活
13.戦場霧中
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しく空を切るだけだ。
「…………っ!」
「うおっ!?」
ビュン! ビュン! ヒュオン! という音が周りから幾重にも聞こえてきた。
大きなものを振り回しているかのような風切音。
恐らくこれが、毒ガス内に取り残されれば命は絶望的とされる理由のもう一つ。そして、俺が先ほどからこの場を動かずに様子を見ていた理由でもある。
「……っ! 伏せろ!!」
「おあああ!?」
目の前に突如生まれた黒い影に反射的に身を屈める。
直後その影は、ビュオオオオ!! と轟音を撒き散らして俺とバリーモッドの頭上をかすめていった。
――これが《無差別攻撃》というやつか。
ガス内では、ボスは無差別に攻撃を行っているという事前情報があった。
今までのボスとの戦いからして、一撃でもまともに受けたら惨事になることは間違いない。辺りが見えない中を無我夢中で進み、万一、死角から強襲されたりでもすれば、最悪、死もありえる。だからこそ、早く脱出しなければならない状況でも下手に動くことは出来なかった。
「…………」
周囲からは絶えず風切音が聞こえてくる。先ほどの攻撃、恐らくはバリーモッドを引き摺り込んだ触手だろう。……いや、よくよく考えればボスは古樹の根で構成されている躰を持つ巨人だ。今の触手は太い根を鞭のように振るっているのかもしれない。
「……すぅー……ふぅー……っ」
丹田に力を込めながら息を吐き、軽く腰を落として半身になる。
槍を、やや石突側に両手で持ち、穂先を出来るだけ躰から離すように双の腕を伸ばす。
――東雲流、水分みくまりの型・浮葉。
毒の効果は問題無いが脱出は困難。
ボスの攻撃は轟音を纏っている。その音と一瞬見える影で回避出来ることは証明済みだ。
ならばここは、ボスの攻撃を耐えつつ毒ガスが消えるのを待つのが得策。
「……提案がある」
しかし、無事にこの場を凌ぐには、この男の協力が必要だ。
「ああ!? ンだよ、もう俺らは終わりだよ……ここから出られるわけねえんだ! 俺はベータ時代に身を持って知ったんだからな!!」
「……生きたくは、ないのか?」
「…………っ」
「生きたいのなら協力して欲しい。二人でなら……絶対に助かる」
足元に蹲る彼の顔はやはり見えない。
しかし、微かに震えている様子は確認出来た。
「…………ひとつ……訊かせろ」
「?」
「なんで…………俺を助けた?」
言われ、言葉に詰まる。
助ける理由など考えている余裕も無かったからだ。
だが、敢えて理由を付けるとするならば。
「……ルネリーたちなら、そうしただろうからだ」
「!」
これに、尽きると思う。
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