暁 〜小説投稿サイト〜
SAO 〜冷厳なる槍使い〜
SAO編
第一章  冒険者生活
13.戦場霧中
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バリーモッドが舌打ちしながらビーターを追うように避難していく。
 恐らく、これで一番の難所は越えたと思う。想定外のことが無い限り、彼がビーターに何かをする機会はほとんど無いだろう。

 ミシ……ミシミシ、ミシミシミシミシッ……!!

 膨張したボスの体から聞こえてくる軋みが、速くなっている。
 俺もバリーモッドのあとに続き、急ぎボスの傍から離れた。

 ――ブシュアアアアアア!!!

 ボスとドーム壁際のちょうど中間地点を駆け抜ける中、後ろからそんな音が聞こえてくる。
 確認するまでもなく、毒ガスの噴出音だろう。
 走りながらちらりと背後を確認すると、まるで津波か鉄砲水のように此方に迫る紫煙。
 広がり具合を見るに、俺の走る速度よりも速い。
 だが、最悪飲み込まれても、この方向に走り続ければ毒ガスからも抜けられる。問題はガス内で方向が解らなくなることだ。

「飲まれる! 飲まれるぅぅぅぅっ!!」
「おーい! 早く来い! 早く早く!!」
「風を感じる……っ!!」
「うおおおおお!! 間に合えええ!!」

 其処彼処から必死の絶叫が聞こえる。
 この距離なら十分間に合う。問題は無い。……無い、はずだ。

「……っ」

 しかし俺の心に余裕は無かった。
 大丈夫だとは理解していても、有害が勢いよく迫って来るという状況に、現実では経験したことが無い危機的状況に、内心では随分焦っていた。
 そのせいか、周り同様、俺も必死になって毒ガスから逃げていた。







「はぁ、はぁ、はぁ……」

 脳にピリピリとくる疲労を感じながら息を整える。
 近くには避難したプレイヤーたち、ビーターとバリーモッドも同様に一息吐いていた。
ほんの三メートル先には紫煙の壁。やはりというべきか、予想よりも広範囲に毒ガスは広まった。
それでも、毒ガス内に取り残されたプレイヤーはいないようだ。安堵の溜め息が至る場所で聞こえてくる。

「……っ」

 そんな中、ようやく落ち着いた様子のバリーモッドと目が合った。
 彼は憎々しげに俺を一瞥して、俺とビーターから離れる様に背を向け――

「…………は?」

 その間の抜けた声を出したのはバリーモッドだった。
 だが俺含め、その場にに居た全員がそれに絶句したのは間違い無い。

「な、なんだよ……なんなんだよ、コレ!?」

 一本の太い茶色の触手が毒ガスの中から飛び出て、バリーモッドの胴に一瞬の内に巻き付いていた。
 事前情報には無かった事態。しかし、驚くのはまだこれからだった。

「ちょっ……やめっ、うそだろ、あ、うぁあああああああ!?」
「!?」

 ――バリーモッドが毒ガスの中に引きずり込まれる……!?

 疑問、混乱、焦燥
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