SAO編
第一章 冒険者生活
13.戦場霧中
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いない。第一層、第二層と続けて差異はあったらしいから、この三層にも当然あると考えていい」
「アルゴさんの攻略本にも、ボスのHPが少なくなってきたときとか、これから起こる毒ガスとかが怪しい、って書いてあったッスしね」
「……ここも、完全に安心は出来ない。ボスの動きには常に注意していた方がいい。それでなくても、プレイヤーたちの波に呑まれて思うように動けなくなる可能性があることだしな……」
「はいっ、わかりました!」
返事をして、あたしたちはボスの方を見た。
未だプレイヤーたちの攻撃は続いている。
だけどボスの方には、目に見えて解る変化が現われていた。
ミシィ……ミシィ……とゆっくりと、けれど確かにボスの巨体は膨らんでいる。
まるで古くなったタイヤみたいに全身に細かな亀裂を生みながら膨張を続ける巨人。
それを見たプレイヤーたちが次第に攻撃の手を止め、壁際に下がって行く。
だけれど、まだ攻撃を続けている人たちのほうが圧倒的に多い。
SAOでは与えたダメージ量によって、戦闘後の取得経験知も変わってくる。それは解ってるけど、でも命が懸かった状況でギリギリまで粘ろうとする気持ちは、あたしには解らなかった。
「…………」
ボスの毒ガスが放たれるまでの二分が、いやに長く感じた。
「――これ以上は危険だ! 後列からドーム壁際まで順に下がれ!」
ボスの体が丸みを帯びるまでに膨らみ、誰かが避難を叫ぶことで光景は一変した。
ほとんど全員が攻撃を止めて壁際まで走ってくる。
「ちょっ、こっちに来るッスよ!?」
「わ、わあー!?」
今まで攻撃を続けていたプレイヤーたちの波が、あたしたちに押し寄せてきた。
「レイア! チマ! はぐれないように固まって!」
あたしは流されないように必死に二人を掴む。
「ネリー……チマっ、キリュウさん……!」
「むおおぉぉ……!!」
あたしたちはお互いをしっかりと掴み合い、満員電車状態が落ち着くまで待とうとした。
――ブシュアアアアアア!!!
動きが止まったのはそんな音が聞こえたのとほぼ同時だった。
「……?」
瞑っていた目を開けると、ボスの居た辺りがバイオレットカラーのスモッグがもくもくと広がっていた。プレイヤーたちはそれに魅入ったように固まっている。
「なんとか、無事っぽい……?」
「う、うん。私は大丈夫」
「わたしもー。かなりビックリしたッスけど」
お互いに顔を見合せて苦笑するあたしたち。
毒ガスの散布が始まったってことは、ガスが消えるまではボスに手出しは出来ない。
一応の休憩タイムだ。
どんどん広がる紫色の濃霧を見ながら、あたしはキリュウさんに話しかけた。
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