SAO編
第一章 冒険者生活
13.戦場霧中
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結局の所、俺は彼女たちに嫌われたくないのだ。嫌われるような行動を取りたくは無い。
それほどまでに、俺の中であの娘たちの存在が大きくなっていた。
「……わかった」
俺の答えに何を思ったのかは知らないが、彼は諦めたように頷いた。
《水分みくまりの型》は、完全受け流しの型である。
本来、突きが主体の槍において、構えとしては両腕を最初から引いておくか自然体で垂らしておく、つまりは《槍を突き出し易い構え》をとるのが普通だ。
しかし水分みくまりの型はその逆、槍を持った両腕は最初から前へ掲げる様に伸ばしておく。
「――右から来るぞ!」
背後にいるバリーモッドの声に、直ぐに穂先を右に向ける。
直後、ビュオオオ!! という風のうなりと共に黒い影が迫って来た。
「……!」
襲い来る影が突き出した槍の穂先を越えた瞬間、伸ばしていた腕を引く。
此方に迫る影と、引き戻す槍の速度を合わせ、相対速度がゼロになる刹那に、穂先の刃の腹を影の側面に添える。
そのまま槍を引きながら体を捻り回転、影を外へ外へと押し出しながら、自らは逆へ動く。
己の躰全体と槍を滑車のようにして、避けることが困難な強烈な攻撃を受け流す。
――流るる川面に浮かぶ木の葉と成りて……!
口伝を心の中で唱えることでイメージを明確にし、己の動きとそれを同一化する。一種の自己暗示のようなものだ。
「……はぁっ!!」
影――太い根の触手の一撃を、その側面を滑るようにして受け流した。
「くっ、おおお!!」
俺の背を両手で掴み、俺の動きに必死に付いて来るバリーモッド。
アルゴのメッセージには、彼のステータスについても詳しく書かれていた。
その内、使用スキルの中に《聞き耳スキル》があったことを思い出した。濃度の高いガスで視界は利かず、頼りになるのは周囲の風切音を聞きとる耳だけの状況。正確にボスの攻撃を受け流すには、彼のスキルが必要だった。
「う、後ろぉ!!」
バリーモッドの声と共に槍の穂先をその方向に向ける。
来る方向が解っていれば、見えるのが一瞬だとしても十分に対処出来る。
あとは俺の仕事だ。迫りくる閃影を見極め、攻撃を逸らす方向を決める。
そして…………受け流す!
「ふっ!」
正面から横薙ぎに襲いかかる触手に槍を合わせて下から押し上げ、自身は上体を逸らしながら回転、触手の下を潜るように回避する。
「ぬあっ、たっ!? おっ、こ、コラ! 後ろにいるヤツのことも考えて動けよ!?」
「…………済まない」
確かに今の動きは、背中にしがみついているバリーモッドがついて来るにはつらかったかもしれない。
「す、すまねぇじ
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