大徳の答えは白に導かれ
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「ああ、侍女の二人に対して生きてくれと願ったあいつなら、私達が願ったらそれを思い出して生きようとしてくれるだろう」
秋斗は歪み切ってしまったら、桃香が作った世界を壊さないように、自分で命を絶つ事を選ぶかもしれない。
それを止めるのが私達の役目、か。
「星が無理やり連れてきて、私がひっぱたいてやればいい。人を救いたいなら、想いを繋ぎたいなら、負けてからも続けろと言ってやればいい。……戻ってきてくれたらそんな事する必要も無いけどさ」
「意地っ張りで、自分勝手で、頑固で、そしてわがままな方ですからなぁ、秋斗殿も」
苦笑を一つ。
瞳に淡い色を浮かべた星はあいつに想いを馳せていた。
どれだけ星は秋斗の事を想っているんだろう。人を愛するってのはどんな気持ちなんだろう。
考えても私には分からない。ほんの少し、私の知らない大きな想いを理解している星が羨ましく感じた。
――星とは違うけど。私は友として、あいつと一緒に平穏な世界を作りなおして、笑い合って暮らしたいな。
先に作られたそんな世界を思い浮かべると、もう居ない牡丹の笑顔を思い出した。
牡丹なら、今の私にどう言うだろうか。
――白蓮様の望むままに、なんて笑って言うんだろう。あのバカの歪んだ脳髄は私が真っ白に洗って、捻くれた心は馬で踏み潰して直してやりますっ……とかも言いそうだ。
「ふふ、あははは!」
「……? 如何なされた?」
思い出し笑いが零れた私を訝しげに見つめてくる。
星に話しても同じ答えが返ってきそうだ。
「いやな、牡丹が今の私を見てどう言うか考えたら笑えてきた」
「ふむ、牡丹なら秋斗殿の脳髄を綺麗に洗って、捻子くれた心を踏み潰して正しますとか言うのでは?」
「っ! ははは! やっぱり! 牡丹ならそう言うよなぁ!」
やはりというかなんというか、星が思い描く牡丹も私と同じだったようだ。そのまま続きを思い浮かべていた星は悪戯っぽくにやりと笑う。
「クク、暴走して白蓮殿への愛を語り尽くすのもお忘れなく」
「お、そういえば星は牡丹の早口を聞き取れてたんだったな」
「話すのも躊躇うような事ばかりゆえ、教えられませぬ」
「いいさ、どうせ私の事持ち上げてばかりだったんだろ?」
「その通りではありますが……白蓮殿が寝ている間に掛け布を……おっと――」
「ちょっと待て! あいつは私が寝てる間に何をしてたんだ!?」
「酒無しでは語れない話ですなぁ」
「くっ……結局こうなるのか……」
「おやおや、気分じゃ無かったのでは?」
「気になったままで寝れるか! ほら、お前の天幕に行くぞ! 洗いざらい吐いて貰うからな!」
「我が主もわがままな事だ。では参りましょう」
楽しそうに歩く星の背を追って、呆れながら
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