大徳の答えは白に導かれ
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」
「変わってしまったなら、目的の為に例え友である我らであっても切り捨てる。秋斗殿はそういう方でしょうな」
「鈴々から聞いた徐晃隊、牡丹に授けた策を見ても異常過ぎる。あいつは桃香と同じだけど曹操とも同じなんだろう。最悪の場合は……」
思い浮かんだ事態に、私の胸はビシリと痛みを伴った。
「私に任せてくだされ。引き摺ってでもあなたの元にお連れ致しますゆえ」
「……頼む。曹操は桃香が、秋斗は私かお前が折って諦めさせるしかない。……まあ、どうなるかなんか分からない。今は哀しみに沈み過ぎるな」
そう、今は考えないでいい。あいつに出会った時に私達でやり遂げよう。
それが例え戦場であっても。
考えながら、私の胸は不安でいっぱいだった。
歪んでしまったあいつは自分の望みが叶わなかった場合、自ら死ぬことは無くても壊れないでいられるんだろうか。私の話を聞いてくれるだろうか。
「お心遣い痛み入る。では白蓮殿、私はあの堅物と少々話がありますのでこれにて」
「任せた。こっちも任せとけ」
星の言葉で思考を打ち切り、二手に分かれてそれぞれ目的の天幕に向かった。
朱里に対して桃香と行った会話を離すと、彼女は涙を零してしばらく泣き叫んでいた。
自分のせいなのに雛里や秋斗を殺さなければならない。そんな覚悟と自責の刃が食い込んでいた彼女は、桃香の示した道によって救われた。
落ち着いた頃合いで促し、桃香の天幕に行った彼女を見送って自分の天幕に戻ると……やはり星が居た。
「居ると思った」
「当然でしょう。三人の邪魔をする事は出来ず、一人寂しい白蓮殿のお相手は私を置いて他に居ない」
ため息を落とす。苦笑と共に紡がれたからかいの言葉はいつも通りの星のまま。批難の目を向けると肩を竦める彼女は、相も変わらず掴み処が無い。
「酒を飲みたい、と言った所だろうけど気分じゃないんだ」
「なんともそれは奇遇ですなぁ。今日の私も百薬の長が必要のない健康な身体でして」
クスクスとくすぐったい笑い声が耳に良く響いた。
微笑みながら対面の椅子に腰かけ、彼女の瞳を見据える。爛々と輝く光は濁りなく、もう悩みも無くなったようだ。
「朱里は雛里と秋斗を手に掛ける覚悟で潰されそうになってたぞ」
「なんとまあ……あの子も我らと同じく頭が固すぎるようだ」
「一人で背負わなくても私達が一緒に背負えばいい。桃香の作って来たこの場所はそういう所になった」
突然、神妙な面持ちになった星が私を見つめる。最近はこいつの考えてる事がある程度読めるようになってきた。
言いたいのはきっと秋斗の事だろう。
「……秋斗殿は頭の良い方です。歪んでしまったとしても、我らが語りかければ必ず自害する事は無いと思います」
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