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乱世の確率事象改変
大徳の答えは白に導かれ
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。なんとしてでも幽州を守るとずっと前に決めていたから耐えられたモノ。

 桃香の答えを待ちながら、お茶を手に取って一口啜った。懐かしい娘娘の味は、もう戻ってこない平穏な日々を思い出させてくれた。
 私にとっての平穏な日々は秋斗が来てから牡丹が死ぬまでの期間。それ以前は……桃香と一緒に私塾に通っていた時。
 桃香は友達。昔からの大切な友達。私の昔を知ってる友達。秋斗や星のように、ふざけ合って楽しい時間をくれるような友達じゃなくて、ただ傍に居ても不思議では無い、そんな友達。
 優しい事は知ってる。誰かの為に在りたいのも知ってる。人を助けたくて仕方ないのも知ってる。人を信じ抜く奴だって事も知ってる。自分と同じだという都合のいい姿だとしても、秋斗や雛里の事だって桃香は信じてたんだ。
 何処か暖かい陽だまりにも似た空間を作り出してくれる、そんな子だ。強いっていうのはなんだろう、と考えた時、真っ先に浮かぶのは桃香だった。
 折れず、曲がらず、歪まず……武の才が無くとも、明晰な頭脳が無くとも、真っ直ぐに誰かを信じて、温もりを与えて進んで行く彼女は、王としてはきっと木なんだろう。そこに皆が寄り集って想いを寄せ、強い日差しや雨から守って安らぎの時間をくれる、大きな……木。
 私はそうなれない。積み上げて積み上げて、漸く人から認められるくらいなんだ。人を導くのに必要なのは強く大きな意思。私には……どうやってもそれが一つにしか向けられない。だから、私は桃香のようには決してなれない。私を慕ってくれる者達だけが切り取って積み上げて、信頼と言う名の柱で建ててくれた小さな家……それが私。誰もが入れる大木では無いんだ。
 桃香のようになりたいとは思わない。前までは羨望を向けていたけど、それももう無い。
 しかしやはり……その意思溢れる瞳は、どうしようも無く眩しい。

――ああ、やっぱりお前は強いんだな、桃香。

 どれほど時間が経ったか、顔を上げて私達三人を見据えた桃香の瞳は強く、気圧されるほど。
 答えはきっと、既に出ていたんだろう。

「私は……何回も、何回も、分かってくれるまで、私と同じ世界を作ってくれるって言ってくれるまで、言葉と力で、交渉や脅しって言われても戦うよ。平和の為に協力して貰いたい、こっちの方がいいんだって、皆で協力するほうがいいんだって……そんな平和を一緒に作って貰って、後の世に託したい。分かって貰えなかったら、それを実感して貰う為に力を使って諦めて貰う」
「矛盾してでもそれを貫くのか?」
「……うん。私は私の望む世界の為に、久遠の彼方に争いの無い世界を作るために、一人でも多くの人と……手を繋ぐ。一人でも多くを救いたいのに、多くの人を犠牲にする矛盾は……その世界を作る為に私が背負う。わがままだけど、作り出した平和な世界を壊されない
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